引き寄せの法則がうまくいかない理由|願う力ではなく、見ていない障害が1つある

引き寄せの法則がうまくいかない理由|願う力ではなく、見ていない障害が1つある

望む未来と自分のあいだに、石がひとつある。見えていなかったのは、その石のほうだった。
望む未来と自分のあいだに、石がひとつある。見えていなかったのは、その石のほうだった。

毎朝、かなった場面を思いえがいている人。ノートにも書いた。それでも、現実はなにも動かない。

「願い方が足りない」と言われて、もっとつよく念じてみた人。

僕も、その順番でやっていました。

動きませんでした。

先に結論を書きます。引き寄せがうまくいかないのは、願いが弱いからではなく、望む未来だけを見て、そこへ行く途中にある障害を見ていないからです

願う力を上げても、ここは直りません。

順番に書きます。

願い方が弱いのではない

2002年に、ひとつの区別が追跡調査でたしかめられています。

期待(実現しそうだと見積もる)努力が高かった成果も高かった4つの集団すべてで同じ空想(かなった場面を気持ちよく描く)努力が低かった成果も低かった4つの集団すべてで逆向き期待(実現しそうだと見積もる)努力が高かった成果も高かった4つの集団すべてで同じ空想(かなった場面を気持ちよく描く)努力が低かった成果も低かった4つの集団すべてで逆向き
同じ4つの集団を、数週間から2年まで追った調査。期待と空想は、逆に働いた。引き寄せの本が教えるのは、空想のほう。

「実現しそうだ」と見積もること。これが期待です。

「かなった場面を気持ちよく思いえがく」こと。こちらは空想です。

似ているようで、働きは逆でした。

求職中の卒業生、片思いの学生、試験前の学生、手術を受けた患者。この4つの集団を、長いもので2年まで追いかけています。

期待の高い人ほど、努力も成果も高かった。

空想を気持ちよく味わった人ほど、どちらも低かった。

4つとも、同じ向きです。

引き寄せの本が教えるのは、たいてい空想のほうです。気持ちよく思いえがく人ほど、努力も成果も低かった

足りなかったのではない。

向きが、逆だった。

気持ちよく思いえがくと、追いかける力がぬける

なぜ空想が成果を下げるのか。

4実験空想でエネルギーが下がった血圧などの生理指標と行動で測定3研究成績が下がった職業訓練校の生徒。欠席が増えたのは3本中2本4実験人に知られた意図ほど動かない1週間の追跡と実験室で同じ向き出典: Kappes 2011・2012/Gollwitzer 20094実験空想でエネルギーが下がった血圧などの生理指標と行動で測定3研究成績が下がった職業訓練校の生徒。欠席が増えたのは3本中2本4実験人に知られた意図ほど動かない1週間の追跡と実験室で同じ向き出典: Kappes 2011・2012/Gollwitzer 2009
気持ちよく空想した人、人に願いを知られた人。どちらも、追いかける力がぬけていた。

仕組みのほうも、測られています。

2011年の4つの実験で、望む未来を気持ちよく空想させたあと、血圧などの生理指標と行動でエネルギーを測りました。

下がっていました。

未来を疑う空想や、暗い空想、どちらでもない空想とくらべても、気持ちのいい空想だけがエネルギーを落としていた。

しかも、切実な望みほど、落ち方が大きかった。

いちばんかなえたいことを、いちばん気持ちよく思いえがく——それが、いちばん追いかける力のぬけるかたちだったんですよね。

きびしい環境の人でも、同じでした。

低所得の家庭が多く、少数派の生徒が通う職業訓練校。その生徒を追った3つの研究では、年度のはじめに空想が多い生徒ほど、年度の終わりの成績が低かった。

3つのうち2つでは、欠席も多かった。

もとの学力と、実現しそうだという見積もりをそろえても、この差は残っています。

人に話すのも、似た働きをします。

2009年の4つの実験で、「法律家になる」のような自分のあり方にかかわる意図は、人に気づかれたものほど行動に移されにくかった。

1週間の追跡でも、実験室でも同じです。

示された理由は、こうです。

人に知られると「もうその自分になれた」という早すぎる感覚が生まれる。

思いえがいて満足しても、宣言して満足しても、追いかける力は同じようにぬける

力がぬけるのは、満足した時点です。

未来のあとに、今の障害を見た人だけが動いた

では、思いえがくのをやめればいいのか。

未来だけ/現実だけ/現実→未来どの順番でも、見込みに関係なく手当たり次第に追う。追いかける力は戻らない未来→今の障害見込みの高い目標を追い、低いものからは手を引く。エネルギーが湧いて、取り組む気持ちが生まれる未来だけ/現実だけ/現実→未来どの順番でも、見込みに関係なく手当たり次第に追う。追いかける力は戻らない未来→今の障害見込みの高い目標を追い、低いものからは手を引く。エネルギーが湧いて、取り組む気持ちが生まれる
4つの考え方のうち、選び分けが起きたのは「未来→今の障害」の順だけ。仲立ちはエネルギー。

そうでもないんです。順番の話でした。

2013年の3つの研究で、人の考え方を4つに分けています。

  • 未来だけに浸る
  • 今の現実だけを見る
  • 現実を見てから未来を描く
  • 未来を描いてから現実を見る

はじめの3つは、どれも同じ結果でした。見込みに関係なく、手当たりしだいに目標を追う。

未来を描いてから今の現実を見た人だけが、見込みの高い目標を追い、低いものからは手を引いていました

だれに教わらなくても、自然とこの順番で考えている人にも、同じ選び分けが起きていました。

この順番でなにが起きているかも、2009年にしらべられています。

見込みが高い目標には、つよく取り組む気持ちが生まれる。その仲立ちをしていたのが、エネルギーでした。

生理指標で測った研究と、エネルギーを本人に答えてもらい、カメラの前で話す課題で取り組みを測った研究の、両方でたしかめられています。

空想は追いかける力をぬき、障害を見ると追いかける力が戻る。

引き寄せの本には、ここが書かれていません。障害を見ることは「ネガティブ」だとされているからです。

望む未来と自分のあいだに、石がひとつある。障害というのは、その石のことです。

「もし〜になったら、こうする」を1行足す

障害が見えたら、もう1行足します。

60%以上練習問題を解いた量(66人)30分の書き込み課題を1回だけ。くらべた群より多い77人ポジティブ思考に勝った成績表と出席と素行がよくなった94件if-thenの検証効果の大きさは中から大出典: Duckworth 2011・2013/Gollwitzer &Sheeran 200660%以上練習問題を解いた量(66人)30分の書き込み課題を1回だけ。くらべた群より多い77人ポジティブ思考に勝った成績表と出席と素行がよくなった94件if-thenの検証効果の大きさは中から大出典: Duckworth 2011・2013/Gollwitzer &Sheeran 2006
未来→今の障害→もし〜になったら、の順で書かせた実験。くらべる相手が「ポジティブに考える」でも勝っていた。

「もし〜になったら、こうする」。いつ、どこで、どう動くかを先に決めておくかたちです。

理由は、意図と行動のあいだの穴にあります。2016年の総説によると、意図したことが実際の行動になるのは、およそ半分

残りの半分は「やるつもりだったのに、やらなかった人」です。

ここが、穴です。

この穴を埋めるかたちとして、2006年に94件の検証をまとめた分析があります。効果の大きさは、中から大。

取りかかること、途中でじゃまされないこと、失敗している道から降りること。どれにも効いていました。

「望む未来 → 今の障害 → もし〜になったら、こうする」。この順番で書かせた実験が、いくつもあります。

高校2年生66人では、30分の書き込み課題を1回やった群が、くらべた群より、練習問題を解いた量が60%以上多くなった。

小学5年生77人の実験は、くらべる相手が「ポジティブに考える」練習でした。それでも、この順番で書いた子どものほうが、成績表と出席と素行がよくなっています。

ここが、いちばんの差です。

ただし、効かなかった試験もあります。

2025年に、イギリスの28の職場・225人を4週間追ったランダム化試験が出ました。

この順番を教わった群と、待ってもらった群で、自分で答えた進み具合に差は出ていません。7段階の尺度で、平均差はマイナス0.19。不安のほうは、上がっていました。

効いた実験の多くは、この手法を作った研究室のものです。

外でやると、こうなることもある。

数字は、そのまま置いておきます。

今日の話をまとめると

引き寄せがうまくいかないのは、願いが弱いからではありません。

① 望む未来かなった場面をひとつ書く。ここまでは引き寄せの本と同じ② 今の障害いちばんじゃまになるものを、ひとつだけ隣に書く③ もし〜になったら「もし〜になったら、こうする」を1行足す① 望む未来かなった場面をひとつ書く。ここまでは引き寄せの本と同じ② 今の障害いちばんじゃまになるものを、ひとつだけ隣に書く③ もし〜になったら「もし〜になったら、こうする」を1行足す
この記事の着地。願いのとなりに、もう見えている石をひとつ書き、その石が来たときの動きを1行足す。

気持ちよく思いえがく人ほど、追いかける力がぬける。4つの集団で、職業訓練校の生徒で、血圧で、同じ向きが出ています。

動いたのは、未来を描いたあとに今の障害を見て、「もし〜になったら、こうする」を足した人でした。

30分の書き込み1回で、練習問題の量が、くらべた群より60%以上多い。

外の研究室では効かなかった試験も、1本あります。

それでも、足りなかったのは願う力ではなく、障害を見る1行です。

今夜、3分だけ使ってください。紙に「もし〜になったら、こうする」を1行だけ書く。〜に入るのは、いま望んでいることの、いちばんじゃまになるものです。

願いは、消さなくていいです。となりに、もう見えている石を、ひとつ書き足すだけです。

引き寄せのどこが本物でどこが作り話かは、引き寄せの法則は嘘なのかに分けて書きました。

期待と注意と行動の3つが効くとたしかめられた話と、2002年の追跡の数字は、引き寄せの法則に科学的根拠はあるのかにあります。

出典・参考文献

  1. Oettingen G, Mayer D. The motivating function of thinking about the future: expectations versus fantasies. J Pers Soc Psychol 2002;83(5):1198-1212.
  2. Kappes HB, Oettingen G. Positive fantasies about idealized futures sap energy. J Exp Soc Psychol 2011;47(4):719-729.
  3. Kappes HB, Oettingen G, Mayer D. Positive fantasies predict low academic achievement in disadvantaged students. Eur J Soc Psychol 2012;42(1):53-64.
  4. Oettingen G, Mayer D, Timur Sevincer A, Stephens EJ, Pak HJ, Hagenah M. Mental contrasting and goal commitment: the mediating role of energization. Pers Soc Psychol Bull 2009;35(5):608-622.
  5. Sevincer AT, Oettingen G. Spontaneous mental contrasting and selective goal pursuit. Pers Soc Psychol Bull 2013;39(9):1240-1254.
  6. Gollwitzer PM, Sheeran P. Implementation intentions and goal achievement: A meta-analysis of effects and processes. Adv Exp Soc Psychol 2006;38:69-119.
  7. Sheeran P, Webb TL. The Intention–Behavior Gap. Soc Personal Psychol Compass 2016;10(9):503-518.
  8. Gollwitzer PM, Sheeran P, Michalski V, Seifert AE. When intentions go public: does social reality widen the intention-behavior gap? Psychol Sci 2009;20(5):612-618.
  9. Duckworth AL, Grant H, Loew B, Oettingen G, Gollwitzer PM. Self-regulation strategies improve self-discipline in adolescents: benefits of mental contrasting and implementation intentions. Educ Psychol 2011;31(1):17-26.
  10. Duckworth AL, Kirby TA, Gollwitzer A, Oettingen G. From Fantasy to Action: Mental Contrasting with Implementation Intentions (MCII) Improves Academic Performance in Children. Soc Psychol Personal Sci 2013;4(6):745-753.
  11. Kudrna L, Yates J, Alidu L, Hemming K, Quinn L, Schmidtke KA, et al. A Mixed-Methods Cluster Randomised Waitlist-Controlled Trial of a Goal-Based Behaviour Change Intervention Implemented in Workplaces. Int J Environ Res Public Health 2025;22(3):398.

引き寄せをやめさせるための資料ではありません。思い描くことが逆に働いた研究も、1行足すと動いた研究も、効かなかった試験も、同じ基準で並べています。ただし引用の多くは、この手法を作った研究室のものです。数字は各論文の抄録と本文で確かめたものだけを書きました。

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