引き寄せの法則を一通りやって、何も変わらなかった。そういう人が、この検索をします。
僕も、そうでした。信じたい。でも、裏切られるのが怖い。
先に結論を書きます。効くと確かめられているのは、期待と注意と行動の3つです。
思ったことが宇宙を経由して届く、という因果のほうは、確かめられていません。
そして、いちばん大事なところ。ただ明るく思い描くことには——測定できる逆効果があります。
順番に書きます。
『ザ・シークレット』の出どころ
2006年の『ザ・シークレット』は、古代の秘密ではありません。系統は19世紀アメリカのニューソート運動で、著者自身が元ネタを1910年の本だと述べています。
もう1人は、思考が成功に影響することは認めたうえで、これは本質的に魔法の結果ではない、と述べています。出演した本人たちが、物理法則としては否定している。
僕はこれを、引き寄せ全体の否定だとは思いません。ただ「量子力学が証明している」という言い方だけは、根拠を失っています。
効くと確かめられている、3つ
では何が残るのか。3つあります。
① 期待は、体を動かす
いちばん強い証拠が、プラセボです。
2010年の試験では、過敏性腸症候群の患者80名に「これは有効成分の入っていない偽薬です」と正直に伝えたうえで飲ませました。それでも、症状の改善スコアが有意に上がっています。
気の持ちよう、という話ではありません。2001年には、プラセボを投与された患者の脳からドーパミンが出るところが、PETで撮影されています。
下向きにも効きます。
硬膜外麻酔を希望した妊婦140名に、注射の直前にかける言葉だけを変えた実験があります。「楽になりますよ」と言われた群と、「大きな蜂に刺されたような感じがします」と言われた群。痛みの中央値は、3対5でした。
ただし、大きさには注意が要ります。教師の期待が生徒に影響するというピグマリオン効果は、18の実験をまとめると平均の効果量が0.11でした。
期待は、効く。でも、小さい。
② 注意は、見えるものを変える
有名なゴリラの実験があります。パスの回数を数えていると、画面を横切るゴリラに気づかない。ゴリラの映像を見た96名のうち、56%が見逃しました。白いチームを数えていた人にかぎると、気づいたのは27%まで落ちます。
核心は、注意が「場所」ではなく「対象」に向くこと。何を探しているか、で決まります。
だから「意識し始めたら、それが目に入るようになった」という体験は、本物です。世界が変わったのではなく、拾い上げる設定が変わっている。
③ 行動は、先に決めておくと実行される
「いつ、どこで、どうやるか」を先に決めておく方法があります。研究の世界では実行意図と呼ばれていて、94の検証で中くらいの効果が出ています。
願うことと、この工程は矛盾しません。
明るく思い描くほど、結果が悪くなる
2011年の実験で、望ましい未来を思い描かせたところ、収縮期血圧が下がりました。しかも、その空想が切実な願いに関するときほど、下がり方が大きかった。
追跡調査でも同じです。大学卒業生の求職を2年追いかけた研究では、明るく空想した人ほど内定数が少なく、応募した数も少なく、給料も低くなりました。
減量プログラムの研究では、もっとはっきり出ています。
| 結果 | |
|---|---|
| 期待(実現できると判断している) | 平均26ポンド多く減量 |
| 空想(明るい映像を思い描く) | 平均24ポンド少なく減量 |
期待と空想は、逆方向に働くんですよね。同じものだと、思われています。ここを混ぜているのが、引き寄せの説明のいちばんの弱点だと思っています。
効く版の手順は、もうわかっている
否定して終わりにはしません。効く版があります。手順は、3つです。
- 望む未来を思い描く
- そのあいだにある現実の障害を、直視する
- 「◯◯になったら、△△する」の形に落とす
この形で介入した4か月の試験では、女性256名のうち介入群の身体活動量が、情報だけを渡された群の2倍になりました。効果は1週目から出て、4か月続いています。
21研究・約1.6万人のメタ分析でも、小さめから中くらいの効果が確認されています。著者自身が、出版バイアスで実際はもっと小さい可能性があると書いていることも、あわせて置いておきます。
つまり、引き寄せに足りないのは科学ではありません。障害を見る工程です。
ついでに、「目標を紙に書くと達成率が上がる」という話について。よく引かれる研究は、査読論文ではなく2007年の学会発表で、完了者は149名でした。
効いているのは、書くことより報告のほうに見えます。よく引用される「43%が76%に」という数字は、この資料には載っていません。
書いてはいけない一行
「病気も自分が引き寄せた」という論法は、使いません。
2つの多施設臨床試験のデータを使った研究があります。がん患者の情動的な幸福感が生存を予測するかを調べたところ、有意な効果はありませんでした。人口統計や臨床の変数がはっきり予後を予測したのと、鋭い対照をなす、と論文は書いています。
系統的なレビューの結論も同じ。生存をおもな評価項目に設計した無作為化試験で、陽性の結果を出したものは一つもない。
気持ちは、体に効きます。プラセボの実験が、それを示している。でも、効く範囲は測られていて、そこには限りがある。
その外側までもっていくと、苦しんでいる人を責める道具になります。
今日の話をまとめると
引き寄せの法則そのものに、科学的根拠は見つかっていません。
でも、期待と注意と行動の3つには、実験の裏づけがあります。そして、ただ明るく思い描くことには、測定できる逆効果があります。
足りないのは、障害を見る工程です。
今夜、3分だけ使ってください。いま願っていることを、ひとつ選ぶ。そのあいだにある障害を、ひとつだけ書き出す。
消す必要はありません。見えている状態にするだけで、動き方が変わります。
言葉の意味を先にそろえたい人は、潜在意識と顕在意識の違いから読んでください。





