潜在意識と顕在意識の違いとは?95%説の出どころと、心理学が実際に確かめたこと

潜在意識と顕在意識の違いとは?95%説の出どころと、心理学が実際に確かめたこと

水面の上が顕在意識、下が潜在意識。よく見るこの図の出どころが、じつはフロイトではない。
水面の上が顕在意識、下が潜在意識。よく見るこの図の出どころが、じつはフロイトではない。

潜在意識について調べると、いきなり数字が出てきます。潜在意識は95%で、顕在意識は5%。潜在意識の力は顕在意識の100倍。ただ、その数字の出どころを書いている記事は、ほとんど見つかりません。

僕も探しました。

見つかりませんでした。

先に結論を書きます。潜在意識と顕在意識のちがいは、気づけるかどうか、の一点です。

そして「95%」「100倍」のほうには、たどれる一次出典がありません。

そのうえで、実験で確かめられていることは、確かにあります。順番に書きます。

「潜在意識」は、心理学の用語ではない

潜在意識は、日本語の日常語です。心理学の教科書にある区分では、ありません。

1900年代フロイトが「下意識」を退け、意識・前意識・無意識の三分に統一1909氷山の比喩は、フロイトを招いた別の心理学者に線がたどれる1963マーフィー『眠りながら成功する』。邦訳は1968年1900年代フロイトが「下意識」を退け、意識・前意識・無意識の三分に統一1909氷山の比喩は、フロイトを招いた別の心理学者に線がたどれる1963マーフィー『眠りながら成功する』。邦訳は1968年
「潜在意識」と「氷山」が、学術ではなく日常語として広まるまで。

フロイト本人が、この語を捨てています。

初期には「下意識」にあたるドイツ語を使っていました。でも後年、はっきり退けているんですよね。

理由も本人が書いています。誰かが subconsciousness と言うとき、それが「意識の下」という位置の話なのか、「もうひとつの地下の意識」という別の話なのか、判別できない——だから信頼できる対立軸は、意識と無意識のあいだにしかない。そう書いて、意識・前意識・無意識の三分に統一しました。

フロイトが氷山の図で心を説明した、という話。あれもフロイトではありません。

心理学史の査読論文が、はっきり書いています。フロイトは公刊された著作で、氷山に一度も言及していない。比喩の出どころは、フロイトを1909年にアメリカへ招いた別の心理学者のほうに線がたどれます。

つまり「潜在意識」も「氷山」も、学術から来た言葉ではない。日常語です。

広まったおもな出どころは、1963年のマーフィー『眠りながら成功する』。邦訳が1968年です。

僕は、マーフィーを否定しません。ただ、あれは思想の本であって、実験の報告ではない。そこは分けておきます。

顕在意識とのちがいは「気づけるかどうか」

ちがいは、1つだけです。自分で内容を、言葉にできるかどうか。

別人だと思う説得しよう、命令しようという発想にな処理の型だとわかる速い自動処理と、遅い意識的処理。入口を変える発想になる別人だと思う説得しよう、命令しようという発想になる処理の型だとわかる速い自動処理と、遅い意識的処理。入口を変える発想になる
潜在意識は、脳の中にいる別人ではない。処理の型が2つあるだけ。
顕在意識 潜在意識(=無意識)
気づけるか 気づける 気づけない
何ができるか 内容を言葉にできる 結論だけが出てくる
学術の呼び方 意識 無意識・非意識的処理
命令が効くか 効く 効かない

ここで気をつけたいのが、潜在意識と顕在意識は、脳の中にいる2人の登場人物ではないということです。

いま心理学が使う枠組みは、Type 1/Type 2 処理という言い方をします。Type 1 は速くて自動、Type 2 は遅くて頭を使う。

潜在意識は、あなたの中にいる別人ではない。処理の型が2つあるだけなんですよね。

別人だと思うから、「説得しよう」という発想になる。処理の型だとわかると、やることが変わります。

「95%が潜在意識」という数字を、たどってみた

「潜在意識は95%」「潜在意識の力は顕在意識の100倍」。この数字を出した研究を探しましたが、根拠になる論文は見つかりませんでした。

1,100万毎秒・感覚が受け取る受容器が理論上どれだけ受け取れるかという帯域40毎秒・意識が処理する意識的な処理がどれくらいの速さで進むかという速度この2つを割って「◯倍」にする計算は、原著者自身がやっていない1,100万毎秒・感覚が受け取る受容器が理論上どれだけ受け取れるかという帯域40毎秒・意識が処理する意識的な処理がどれくらいの速さで進むかという速度この2つを割って「◯倍」にする計算は、原著者自身がやっていない
よく引かれる2つの数字。ただし、測っているものがちがう。

書いておきます。ない、ということです。

いちばん近い実在の主張は、2002年のティモシー・ウィルソンの本にあります。五感が受け取る情報は毎秒1,100万個以上、意識的に処理できるのは毎秒約40個。

ただ、この2つは割り算できません。

1,100万は「受容器が理論上どれだけ受け取れるか」という帯域の話。40は「処理がどれくらいの速さで進むか」という速度の話。測っているものが、ちがいます。

そして、割って「◯倍」にする計算は、ウィルソン自身がやっていません。

2025年の総説では、人の行動としての情報量は毎秒約10ビット、感覚系が集めるのは毎秒約10億ビットと整理されました。桁が8つちがう。

ただし、この論文の問いは「だから潜在意識のほうが強い」ではありません。逆で、この落差にまだ説明がついていない。

桁がちがうのは本当。でもそれは脳が容赦なく捨てているという意味です。

実験で確かめられている、4つのこと

数字を落としたぶん、残ったものを書きます。追試に耐えているものだけです。

潜在記憶思い出せない経験でも、行動には残る(1987)潜在学習規則を説明できないまま、規則を学ぶ(1967)不注意盲探していないものは、見ていても見えない(1999)情報量の落差入口と出口で桁がちがう。脳が容赦なく捨てている
出どころのない数字を落としたあとに残る、4つ。ここが地面。

ひとつ目は、潜在記憶。

思い出せない経験でも、行動には残る。健忘症の患者に単語を見せると、本人は「見た覚えがない」と答えます。それでも、単語の一部を見せて残りを埋めさせる課題では、成績が上がりました。

ふたつ目は、潜在学習。

1967年の実験では、人工の文法から作った文字列を、ただ暗記させました。「文法がある」とは伝えていません。そのあと、初めて見る文字列が文法に合っているかを判定させると、偶然を超えて当たった。

説明できないのに、判別はできる。

みっつ目は、不注意盲。

有名なゴリラの実験です。パス回数を数えていると、画面を横切るゴリラに気づかない。1999年の実験では、ゴリラの映像を見た96人のうち、56%が気づきませんでした。

2013年には、放射線科医24名にCT画像を見せた研究があります。結節の48倍の大きさのゴリラを埋め込んだところ、20名が気づかなかった。視線計測では、その多くがゴリラを直接見ていました。

専門家でも、探していないものは見えません。

核心は、注意が「場所」ではなく「対象の特徴」に向くことです。黒シャツを数えた人は58%が気づき、白シャツを数えた人は27%。黒いゴリラだからです。

一方、網様体賦活系が願いを叶えるという説明は、原典を読むと根拠になりません。1949年の論文が示したのは覚醒レベルの制御であって、望むものの選別ではないからです。

命令は効かない。でも、入力は変えられる

潜在意識に、命令は効きません。

66日中央値自動になるまでの日数18〜254範囲(日)同じ研究の中でこれだけ開く39/82想定どおり解析できた人のうち、カーブを描いたのは半分以下「21日で習慣化」は1960年の随想。検証実験は一件も行われていない66日中央値自動になるまでの日数18〜254範囲(日)同じ研究の中でこれだけ開く39/82想定どおり解析できた人のうち、カーブを描いたのは半分以「21日で習慣化」は1960年の随想。検証実験は一件も行われていない
習慣が自動になるまでの実測。日数を目標にしないほうがいい理由が、3つ目に出ている。

100年近く前に、ユングが一行で書いています。

意識は鸚鵡のように馴らすことができるが、無意識はそうはゆかない

『心理学と錬金術』の73ページ。上の層には、言い聞かせが効く。下の層には、効かない。

だから僕は「潜在意識を書き換える」という言い方を、あまりしないんですよね。

代わりに使うのが、「味方につける」です。命令ではなく、入力のほうを変える。

入力は3つあります。

  • 何に注意を向けるか(設定が変われば、拾うものが変わる)
  • どの文脈で、何をくり返すか
  • どんな像を、どれくらいはっきりもつか

2つ目について、数字が1つあります。習慣が自動になるまでの日数を実測した研究で、中央値は66日。範囲は18日から254日でした。

「21日で習慣化」という話が有名ですが、あれは1960年の形成外科医の本にある雑感です。根拠になる検証実験は、一件も行われていません。

この研究にも、あまり報告されない限界があります。解析できた82人のうち、想定どおりのカーブを描いたのは39人。半分以下です。

だから僕は、日数を目標にしません。文脈を固定するほうを、目標にします。

今日の話をまとめると

潜在意識と顕在意識のちがいは、気づけるかどうかの一点です。

命令する言い聞かせる。下の層には効かない入力を変える明日いちばん気にしたいことを、ひとつだけ決めて書く命令する言い聞かせる。下の層には効かない入力を変える明日いちばん気にしたいことを、ひとつだけ決めて書く
この記事の着地。やることが1つ変わる。

95%も100倍も、たどれる出典がありませんでした。かわりに残ったのが、潜在記憶・潜在学習・不注意盲・情報量の落差の4つ。

そして、いちばん大事なのは、最後の一行です。

命令は、効かない。でも、入力は変えられる。

今夜、3分だけ使ってください。明日いちばん気にしたいことを、ひとつだけ決めて、紙かスマホのメモに書く。

念じるためでは、ありません。注意の設定を1つ決めておくと、明日の視野から拾い上げるものが変わるからです。ゴリラの実験が、そういう話でした。

言葉の意味がそろったら、次は引き寄せの法則に科学的根拠はあるのかを読んでみてください。

出典・参考文献

  1. Freud S. The Question of Lay Analysis (1926). Standard Edition Vol.XX, Hogarth Press.
  2. Green CD. Where did Freud's iceberg metaphor of mind come from? History of Psychology 2019;22(4):369-372.
  3. Evans JS, Stanovich KE. Dual-Process Theories of Higher Cognition: Advancing the Debate. Perspect Psychol Sci 2013;8(3):223-241.
  4. Schacter DL. Implicit memory: History and current status. J Exp Psychol LMC 1987;13(3):501-518.
  5. Reber AS. Implicit learning of artificial grammars. J Verbal Learning Verbal Behav 1967;6(6):855-863.
  6. Simons DJ, Chabris CF. Gorillas in Our Midst. Perception 1999;28(9):1059-1074.
  7. Drew T, Võ ML-H, Wolfe JM. The Invisible Gorilla Strikes Again. Psychological Science 2013;24(9):1848-1853.
  8. Wilson TD. Strangers to Ourselves: Discovering the Adaptive Unconscious. Harvard University Press, 2002.
  9. Zheng J, Meister M. The unbearable slowness of being: Why do we live at 10 bits/s? Neuron 2025;113(2):192-204.
  10. Moruzzi G, Magoun HW. Brain stem reticular formation and activation of the EEG. EEG Clin Neurophysiol 1949;1:455-473.
  11. Lally P, et al. How are habits formed. European Journal of Social Psychology 2010;40(6):998-1009.
  12. C・G・ユング『心理学と錬金術 I』池田紘一・鎌田道生訳, 人文書院・新装版, 2017, p.73

本文の数字は、すべて上の一次資料にあたって確かめたものだけです。出どころをたどれなかった数字は、たどれなかったと書いています。

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