引き寄せの法則は嘘なのか|たどると消える2つの根拠と、効いたと感じる仕組み

引き寄せの法則は嘘なのか|たどると消える2つの根拠と、効いたと感じる仕組み

引き寄せの「法則」は、たどると根拠が割れる。ただし、割れずに残るところもある。
引き寄せの「法則」は、たどると根拠が割れる。ただし、割れずに残るところもある。

引き寄せの本を読んで、実践して、変わらなかった。それで「引き寄せの法則 嘘」と検索している人。

僕も、そちら側でした。信じたいし、裏切られるのも怖い。

先に結論を書きます。嘘なのは、「法則」と言っているところです。願いが宇宙を経由して届く、という因果は確かめられていません

ただし、引き寄せを信じた人に起きている変化は、本物です。

そして根拠のほうには、作り話だと判定済みのものが混ざっています。順番に書きます。

「法則」と言っているところが、嘘

2006年の『ザ・シークレット』は、引き寄せを「法則」と呼びました。通信社の2007年の記事によると、当時すでに520万部が印刷され、DVDは200万本売れています。

法則として読む起きたことは全部、自分の思考のせいになる。どんな結果でも正しくなり、確かめようがない現象として読む願ったあとに、期待と注意と行動が変わる。ここは測れる。効いているのは、この部分法則として読む起きたことは全部、自分の思考のせいになる。どんな結果でも正しくなり、確かめようがない現象として読む願ったあとに、期待と注意と行動が変わる。ここは測れる。効いているのは、この部分
「法則」として読むか、「現象」として読むか。読み方で、落ちる場所が変わる。

中身は、「似たものが似たものを引き寄せる」。

ここまでなら、ひとつの考え方です。問題は、例外を認めない形で書かれていることでした。

本には、こうあります。多くの命が失われた歴史上の出来事では、亡くなった人たちの思考の波長が、出来事の波長と一致していた。

僕はここで、「法則」という言葉のほうを問題にします。物理の法則は、例外がひとつ見つかった時点で崩れます。

ところが引き寄せの「法則」は、うまくいけば証拠になり、うまくいかなければ「思いが足りなかった」になる。災害に遭えば——「波長が合っていた」になる。

どんな結果が出ても正しいことになる主張は、法則ではありません。 確かめようが、ないからです。

自己啓発本を研究している心理学者が、同じ記事でこう言っています。この理屈だと、貧しい人は自分の思考でそれを招いたことになる、と。

作り話①「100匹目の猿」

ひとつ目が「100匹目の猿」。ある島で芋を洗う猿が100匹に達した瞬間、海を越えた別の島の猿まで一斉に洗い始めた、という話です。出どころは、1979年のライアル・ワトソンの本でした。

59匹1962年の群れの数1952年は20匹。100匹に届いたことがない36/491962年8月に洗っていた2歳以上のうち。9年かけて広がった2匹1958年に新しく覚えた「一斉に広まった年」とされた年の実数出典: Kawai 1965(Amundson 1985が同じ数字を引いている)59匹1962年の群れの数1952年は20匹。100匹に届いたことがな36/491962年8月に洗っていた2歳以上のうち。9年かけて広がった2匹1958年に新しく覚えた「一斉に広まった年」とされた年の実数出典: Kawai 1965(Amundson 1985 が同じ数字を引いている)
幸島の群れの、実際の数字。100匹目は、数のうえで存在しない。

元になった研究は実在します。1965年に日本の霊長類学者が発表した、宮崎県の幸島の観察記録です。

原論文の数字は、こうです。

  • 群れの数は1952年に20匹。1962年でも59匹
  • 洗い始めたのは1953年9月、1歳半のメスが1匹
  • 1962年8月の時点で、2歳以上の49匹中36匹が洗っていた

100匹目の猿は、数のうえで存在しない。群れが100匹に届いたことが、一度もないからです。

広がり方も、一斉ではない。若い猿が覚え、その母親が覚え、生まれた子が母親から覚えた。9年かけて、ゆっくりです。

「一斉に広まった年」とされる1958年に新しく覚えたのは、2匹だけでした。

ワトソン本人が、本の中で「細部は即興で補うしかない」と書いています。「99匹だったとしよう」「火曜日の午前11時だったとしよう」という書き方で。

海を越えた話にも、原論文に別の説明があります。1960年に、芋を洗う1匹のオスが泳いで別の島に渡り、1964年に戻ってきた。猿は、泳ぐんですよね。

1996年には、原論文の著者本人が答えています。通常より速く広がった技能は知らない。他の群れに洗う個体はいるが、群れの中に広がった例は観察されていない

テレパシーの発想は、西洋から持ち込まれたものだろう、とも。

作り話②「イェール大学の1953年の目標調査」

ふたつ目は、目標の話です。

1991年の雑誌記事3%が97%より多くの資産を持った、と書く情報源筆者の元ネタは、講演家の音声テープ講演家長年耳にしてきたが、具体的な出典はない大学図書館卒業生にも記録にも、調査の痕跡がない1991年の雑誌記事3%が97%より多くの資産を持った、と書情報源筆者の元ネタは、講演家の音声テープ講演家長年耳にしてきたが、具体的な出典はない大学図書館卒業生にも記録にも、調査の痕跡がない
「イェールの目標調査」をさかのぼった道筋。最後に残ったのは、出典のない講演の記憶だった。

1953年、イェール大学の卒業生のうち、目標を紙に書いていたのは3%だった。20年後、その3%が残りの97%を合わせたより多くの資産を持っていた。引き寄せの本でも、目標設定の本でも、くり返し引かれてきました。

イェール大学の図書館が、公式に答えを出しています。

1953年卒業生の「目標調査」が実際に行われた事実は、確認されなかった

図書館は、長年この問い合わせを受けてきました。卒業生の代表にも同級生にも聞き、大学の記録も調べた。痕跡は、ありませんでした。

1991年に成功をテーマにした雑誌が記事にし、その筆者の情報源は、ある講演家の音声テープでした。

筆者がたずねると、講演家の答えはこうです。長年この数字を耳にしてきたが、具体的な出典は持っていない。語り継がれるうちに、事実の形になった。

なぜ「効いた」と感じるのか

根拠が消えたのに、効いたと感じる人がいる。しかも、たくさんいる。

「引き寄せた」と数える「思いが足りなかった」で消える「偶然」で消えるそもそも見ない起きた起きなかった願った願わなかった
4つのマスのうち、記憶に残るのは左上だけ。残りは、それぞれ別の理由で消える。

1998年に、確証バイアスについての大きな総説が出ています。定義は、すでに持っている信念に有利な形で、証拠を探したり解釈したりすること。しかも、自分では気づかないまま。

引き寄せに当てはめると、こうなります。

起きた 起きなかった
願った 「引き寄せた」と数える 「思いが足りなかった」で消える
願わなかった 「偶然」で消える そもそも見ない

4つのマスのうち、記憶に残るのは左上だけです。残りの3つは、それぞれ別の理由で消えていく。

だから、効いた話だけが積み上がります。嘘をつく気は、まったくないんですよね。数え方のほうが、最初から偏っている。

DVDには、自転車を盗まれるのを心配して太い鎖で縛った男が、結局盗まれる場面があります。心配が引き寄せた、という例として。

でも、心配して縛って盗まれなかった日は、数えられていない。そちらのほうが、たぶんずっと多い。

本物の部分は、どこか

否定して終わりには、しません。

落とす: 「法則」どんな結果でも正しくなる主張。確かめようがない落とす: 作り話の根拠100匹目の猿と、イェールの目標調査。たどると消えた残る: 期待・注意・行動願ったあとに変わる部分。ここは実験で確かめられている思い描くだけで止まると、行動が減る(Kappes & Oettingen2011)
落とすものと、残るもの。残った3つは、実験で測られている。

実験で確かめられているものが、3つあります。

期待が体を動かすこと。注意の向け方で、見えるものが変わること。行動を先に決めておくと実行されること。

ここは本物です。

ただし、同じ流れから逆の結果も出ています。明るく思い描くだけだと、体のエネルギーが下がり、行動が減る。2年後の就職や、減量の結果まで悪くなっていました。

効いているのは「引き寄せ」ではなく、願ったあとに変わる注意と行動のほうです

思い描くだけで止まると、その行動が減る。

法則の部分を落としても、ここは残ります。むしろ落としたほうが、残った部分がよく効くようになる。

今日の話をまとめると

引き寄せの法則は、「法則」と言っているところが嘘です。

出来事だけを数える「引き寄せた」と思った出来事だけが記憶に残る。左上のマスに入る前の行動も書く出来事の前に自分がやった行動をひとつ書く。見つかれば、それが本物の側出来事だけを数える「引き寄せた」と思った出来事だけが記憶に残る。左上のマスに入る前の行動も書く出来事の前に自分がやった行動をひとつ書く。見つかれば、それが本物の側
書けば、どちらの側かがわかる。

どんな結果が出ても正しいことになる主張は、確かめようがない。そして根拠のうち、100匹目の猿とイェールの目標調査は、たどると作り話でした。

猿は59匹しかいなかった。調査は、行われていなかった。

効いたと感じるのは、確証バイアスのせいです。願って起きたことだけが、記憶に残る。

本物なのは、願ったあとに変わる注意と行動のほうです。

今夜、3分だけ使ってください。この1ヶ月で「引き寄せた」と思った出来事を、ひとつ書く。その横に、その前に自分がやった行動を、ひとつ書く。

行動が見つかれば、それが本物の側です。

願いと結果の関係を、効く形まで落としたい人は、引き寄せの法則に科学的根拠はあるのかを読んでください。

「科学的に確かめる」という手つきそのものに興味があれば、超心理学と心理学の違いが近いと思います。

出典・参考文献

  1. Burghart T. 'The Secret' flying off the shelves. Associated Press(The Spokesman-Review 掲載), 2007-06-26.
  2. Kawai M. Newly-acquired pre-cultural behavior of the natural troop of Japanese monkeys on Koshima islet. Primates 1965;6(1):1-30.
  3. Amundson R. The Hundredth Monkey Phenomenon. Skeptical Inquirer 1985;9(4):348-356.
  4. Pössel M, Amundson R. Senior Researcher Comments on the Hundredth Monkey Phenomenon in Japan. Skeptical Inquirer 1996;20(3):51-52.
  5. Watson L. Lifetide. Simon and Schuster, 1979.(Amundson 1985 経由)
  6. Yale University Library. Where can I find information on Yale's 1953 goal study? Ask Yale Library, 2020-09-28.
  7. Nickerson RS. Confirmation bias: A ubiquitous phenomenon in many guises. Review of General Psychology 1998;2(2):175-220.
  8. Kappes HB, Oettingen G. Positive fantasies about idealized futures sap energy. J Exp Soc Psychol 2011;47(4):719-729.

引き寄せを否定するために集めた資料ではありません。作り話と判定された根拠も、本物だと確かめられた部分も、同じ基準で並べています。猿の数字は1965年の原論文を開いて確かめました。

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