潜在意識の書き換え方|念じても変わらない理由と、中央値66日の本当の手順

潜在意識の書き換え方|念じても変わらない理由と、中央値66日の本当の手順

潜在意識は線路の分岐と同じ。念じても、列車は曲がらない。切り替えるのは、手前の分岐のほうです。
潜在意識は線路の分岐と同じ。念じても、列車は曲がらない。切り替えるのは、手前の分岐のほうです。

「自分は成功する」と毎晩念じて、翌朝には忘れている人。本を読んで、読んだその日だけ変わった気がした人。

僕も長いあいだ、何かが変わる日を待っていました。

決意だけして、動かずに。

何も、来なかった。

先に結論を書きます。潜在意識の書き換えとは、念じて命令することではなく、行動のきっかけを変えて、同じきっかけで同じ行動をくり返すことです

きっかけとは、場所と、直前の動作のことです。

切り替えるのは、きっかけという分岐のほうです。

順番に書きます。

書き換える相手は「習慣」だった

辞書を引くと、潜在意識は「活動はしているが自覚されない意識」とあります。別の辞書には、過去の経験でつくられた価値観・習慣・思い込み、とありました。

習慣になった行動ほぼ毎日、同じきっかけでやっているやっている最中、別のことを考えていストレスの感じ方が小さい習慣でない行動きっかけが決まっていない意識で導かないと進まないストレスの感じ方が、習慣より大きい習慣になった行動ほぼ毎日、同じきっかけでやっているやっている最中、別のことを考えているストレスの感じ方が小さい習慣でない行動きっかけが決まっていない意識で導かないと進まないストレスの感じ方が、習慣より大きい
2002年の日誌研究2件。同じきっかけでくり返している行動ほど、意識を使わずに走っている。

習慣という言葉が、定義の中に入っています。

ここが入口です。

習慣を調べているチームが、2002年に日誌研究を2件やっています。参加者に毎時、何をしていて何を考えているかを書いてもらう。

ほぼ毎日、同じきっかけでやっていることのあいだ、人はそれと関係のないことを考えていました。意識で導く必要がないからです。

しかも、楽なのです。ストレスの感じ方も、習慣のほうが小さかった。

意図なしに始まり、意識をほとんど使わずに、終わりまで走る。2006年の論文は、そう書いています。

勝手に、走るのです。

自覚がないのに動いている行動。それが、辞書のいう潜在意識の中身です

念じても書き換わらない理由

では、念じると何が起きるのか。

きっかけ場所と直前の動作を、目にする反応目標を通らずに、動き出す完了意識をほとんど使わず、走り切るきっかけ場所と直前の動作を、目にする反応目標を通らずに、動き出す完了意識をほとんど使わず、走り切る
習慣の動き出し方。決意が置かれる「目標」は、この線の上にない。

2007年の論文が、習慣の動き出し方を整理しています。

習慣は、きっかけと反応の結びつきを、ゆっくり学習して生まれる。いったんできると、きっかけを目にしただけで、反応が動き出す。

目にした、それだけで。

このとき、反応は目標を通りません。

決意は、素通りされます。

「今日はやらない」と決めていても、いつもの場所でいつもの動作をすると、反応が先に動く。決めた翌朝に忘れているのは、意志が弱いからではないのです。

決意は目標の側にあり、習慣はきっかけの側にある——届く場所が、ちがう

消費者の習慣を扱った2006年の論文は、はっきり言っています。信念や意図を変えようとする介入は、習慣になった行動には効きにくい。

うまくいった習慣の変更は、習慣を自動で動かしているきっかけのほうを壊していた。

壊すのは、きっかけです。

念じるのは、信念と意図を変える作業です。

だから、届かないのです。

引っ越すと、習慣が動かなくなる

きっかけを壊すと、どうなるのか。記録があります。

残る。転学した学生の運動・新聞・テレビ途切れる。一部では、意図の側に戻る動き続ける。念じても届かない狙い目。引っ越し・転職の時期きっかけが同じきっかけが変わる続けたい習慣やめたい習慣
きっかけが変わると、いい習慣も悪い習慣も区別なく動かなくなる。だから引っ越しと転職は、狙い目になる。

2005年の研究は、大学を移った学生を追いました。運動、新聞、テレビ。この3つの習慣が、移ったあとも残るのか。

残ったのは、きっかけが変わらなかった人だけでした。

たとえば、前の大学でも人と新聞を読み、移ったあともそうだった人。きっかけが変わった人では習慣が途切れ、一部では、行動が本人の意図の側に戻っていました。

2021年には、別のグループが、別の出来事で同じことを見ています。フランスとスイスの調査で、最初の質問紙に答えたのは283人、3回目まで残ったのは113人でした。

ロックダウン前の習慣は、あとから思い出して答えたものです。

運動の習慣は、ロックダウンの前から途中までに弱まりました。強い習慣をもっていた人ほど、弱まった。思い出しての回答なので、そこは差し引いて読んでください。

ロックダウン前の習慣は、ロックダウン中の行動を予測しませんでした。

きっかけが消えると、習慣は動き出さなくなる。

いい習慣も、悪い習慣も。

だから引っ越しや転職は、書き換えの狙い目になる。さきほどの2006年の論文が、そう見ています。

書き換えにかかる日数は、中央値で66日

きっかけを決めて、くり返す。その日数を測った研究があります。

66日自動になるまでの中央値増え方は最初が速く、あとは頭打18〜254日人によっての幅上限の95%に届くまで1回抜けても戻らない翌日から自動性はまた増える曲線が当てはまった39/82人での値(Lally 2010)66日自動になるまでの中央値増え方は最初が速く、あとは頭打ち18〜254日人によっての幅上限の95%に届くまで1回抜けても戻らない翌日から自動性はまた増える曲線が当てはまった39/82人での値(Lally 2010)
96人が12週間、毎日同じきっかけでくり返した。曲線が当てはまった39人での日数と、その幅。

2010年の研究で、96人が、食べる・飲む・体を動かすのどれかを選び、毎日同じきっかけでやりました。たとえば「朝食のあと」に。期間は12週間、分析できたのは82人分です。

自動でやれている感じは、曲線で増えました。増え方は最初が速く、あとは頭打ちになる。

ただし、その曲線が当てはまったのは62人。想定どおりだったのは、そのうち39人でした。

半分以下です。

その39人で、頭打ちまでの日数を数えます。中央値で、66日でした。

ただし、真ん中の人の話です。上限の95%に届くまでの日数は、いちばん早い人で18日、いちばん遅い人で254日

ひらきが、大きすぎます。

2024年にこの分野をまとめ直したレビューは、20件・2,601人分を並べています。中央値は59日から66日、平均は106日から154日。ただし20件のうち11件は、偏りの危険が高いと評価されていました。

数字は、目安どまりです。

1回やり損ねても、そこまでの積み上げは実質、減りませんでした。

抜けても、続く。

1回の失敗で、振り出しには戻らない。ここは、大きいです。

痕跡は消えない。止めるだけ

では、もうある習慣は、どうするのか。

上書きしようとする習慣の記憶の痕跡は変わりにくく、解釈し直しも効かない。念じても、痕跡は残動き出した瞬間に止める「やらないぞ」と念じて、やりかけた瞬間を見張る。止める力のほうが強くなる上書きしようとする習慣の記憶の痕跡は変わりにくく、解釈し直しも効かない。念じても、痕跡は残る動き出した瞬間に止める「やらないぞ」と念じて、やりかけた瞬間を見張る。止める力のほうが強くなる
2010年の日誌研究2件と実験1件。効いたのは、消す念じ方ではなく、見張る念じ方だった。

引っ越しで動き出さなくなっても、記憶の痕跡そのものは残っています。

同じ2010年の、別の研究の答えはこうです。記憶の痕跡は変わりにくく、解釈し直しも効かない。だから、動き出した反応を抑えるしかない。

上書きではなく、抑止。

日誌研究2件と実験1件で、いちばん効いたやり方が調べられています。「やらないぞ」と念じて、やりかけた瞬間を見張る。これを、警戒モニタリングと呼びます。

消すためではなく、止めるために、念じるのが効いています。

消す道具では、ない。

ただ、習慣そのものは弱くなっておらず、見張ることで、止める力のほうが強くなっていただけです。

念じて消すのではなく、念じて止める。書き換えは、その隣できっかけを変えてやる

今日の話をまとめると

潜在意識の中身は、自覚のないまま動いている習慣です。

念じて命令する決意は目標の側に置かれる。習慣は目標を通らない。翌朝には消えているきっかけを変えて、くり返す場所と直前の動作を決めて、毎日同じきっかけでやる。中央値66日で自動にな念じて命令する決意は目標の側に置かれる。習慣は目標を通らない。翌朝には消えているきっかけを変えて、くり返す場所と直前の動作を決めて、毎日同じきっかけでやる。中央値66日で自動になる
この記事の着地。書き換えるのは、言葉ではなくきっかけのほう。

習慣はきっかけで動き出す。目標は、通らない。だから念じても届かない。

書き換えとは、きっかけを変えて、同じきっかけで同じ行動をくり返すこと。自動になるまで中央値で66日、人によって18日から254日。1回抜けても、戻らない。

もうある悪い習慣は、痕跡を消すのではなく、動き出した瞬間に止める。

念じた翌朝に忘れているのは、意志の弱さではなく、届く場所のちがいでした。

今夜、3分だけ使ってください。続けたいことをひとつ選んで、「どこで・何のあとに」やるかを、1行で決める。「朝食のあと、台所で」くらいで、かまいません。

決めるのは、きっかけのほうです。

言葉の整理から入りたい人は潜在意識と顕在意識の違いを、念じるやり方が実験でどう判定されたかは潜在意識は嘘なのかを読んでください。

だれが書いているかは、プロフィールに置きました。

出典・参考文献

  1. Wood W, Quinn JM, Kashy DA. Habits in everyday life: thought, emotion, and action. J Pers Soc Psychol 2002;83(6):1281-1297.
  2. Neal DT, Wood W, Quinn JM. Habits—A Repeat Performance. Curr Dir Psychol Sci 2006;15(4):198-202.
  3. Wood W, Neal DT. A new look at habits and the habit-goal interface. Psychol Rev 2007;114(4):843-863.
  4. Wood W, Tam L, Witt MG. Changing circumstances, disrupting habits. J Pers Soc Psychol 2005;88(6):918-933.
  5. Verplanken B, Wood W. Interventions to Break and Create Consumer Habits. J Public Policy Mark 2006;25(1):90-103.
  6. Lally P, van Jaarsveld CHM, Potts HWW, Wardle J. How are habits formed: Modelling habit formation in the real world. Eur J Soc Psychol 2010;40(6):998-1009.
  7. Gardner B, Lally P, Wardle J. Making health habitual: the psychology of 'habit-formation' and general practice. Br J Gen Pract 2012;62(605):664-666.
  8. Singh B, Murphy A, Maher C, Smith AE. Time to Form a Habit: A Systematic Review and Meta-Analysis of Health Behaviour Habit Formation and Its Determinants. Healthcare (Basel) 2024;12(23):2488.
  9. Quinn JM, Pascoe A, Wood W, Neal DT. Can't control yourself? Monitor those bad habits. Pers Soc Psychol Bull 2010;36(4):499-511.
  10. Maltagliati S, Rebar A, Fessler L, et al. Evolution of physical activity habits after a context change: The case of COVID-19 lockdown. Br J Health Psychol 2021;26(4):1135-1154.
  11. Weblio辞書「潜在意識」(デジタル大辞泉・実用日本語表現辞典の項)

習慣の研究を、潜在意識の話として読み直したものです。66日という数字は Lally 2010 の抄録には無く、本文は有料で開けませんでした。この数字だけは、同じ研究を引いている公開論文(Gardner 2012 と、2024年のシステマティックレビュー)から取っています。ほかの数字は、抄録か本文を開いて確かめたものだけです。習慣の実測は、この分野を長くやっている一つの研究グループの仕事が中心なので、別グループの2021年の観察も並べています。

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