超心理学という言葉を調べて、テレパシーと念力の2つ、という説明でとまった人。
UFOも、占いも、雪男も、ぜんぶおなじ棚に入っていると思っていた人。
僕も、そうでした。
先に結論を書きます。超心理学は、何を扱うかだけでなく、何を扱わないかまで、学会と大学の資料に名前で書いてある研究分野です。
境目は、思っているよりはっきり引かれています。
順番に書きます。
学会が、自分で書いている定義
日本超心理学会が、公式サイトに一文で置いています。
「未だに物理的には説明がつかない、心と物、あるいは心同士の相互作用を科学的な方法で探究する研究分野」。
読みどころは、うしろ半分のほうです。
扱う対象がふしぎなのであって、扱いかたまでふしぎなわけではない。
「科学的な方法で」と、学会が自分で書いている。
学会は、そこをゆずりません。
そこが、占いや心霊の商売と分かれる線になります。
扱うのは、2つではなく3つ
ESPとPK。この2つで説明されることが多いです。
百科事典のほうも、ラインが研究の対象をESPと念力(PK)の2つだけに限定した、と書いています。
ところが学会の定義は、3つ挙げています。
ESPは、テレパシー・透視・予知。ふつうの感覚器官を超えて、外の情報を知覚したと見られる現象です。
PKは、いわゆる念力。サイコロの目、物体の移動や変形、念写。ふつうの運動器官を超えて、外へ働きかけたと見られる現象です。
3つ目が、サバイバル。生まれ変わりや幽霊屋敷など、死んだ人格が霊魂として作用したと見られる現象です。
このサバイバルが、2つの説明では落ちています。
理由は、歴史のほうにありました。
明治大学の資料には、ラインが超心理学を命名したとき、研究を現代化するために、なかば意図的にサバイバルを外した、とあります。
サバイバルがもどってきたのは、そのあとの生まれ変わりの研究によってでした。
ふるい説明で2つ、いまの学会の定義で3つ。
数が割れているのは、まちがいではなく、時期の差なのです。
どちらも、うそではない。
名前のほうは、入れ子になっています。
透視・テレパシー・予知をまとめて、ESP。ESPとPKをまとめて、PSI(サイ)。
このPSIが、超心理学の中心の対象です。サバイバルは、そのPSIの外にあります。
ラインははじめ、透視とテレパシーだけをESPと呼び、予知まで入れたものをGESP(一般ESP)と呼び分けていました。
呼び名については、分野の中からこんな提案も出ています。透視・テレパシー・念力といった、仕組みを言い当てているように聞こえる呼び名をやめて、すべて「特異現象」と呼ぼう、という話です。
扱わないものが、名指しで書いてある
ここが、この分野でいちばんめずらしいところだと思ってます。
明治大学のサーバーにある『超心理学講座』に、こう書かれています。
典型的な研究対象は、透視・テレパシー・予知・念力・サバイバルの5つ。
透視・テレパシー・予知はまとめてESP、念力がPK。だから5つ挙がっていても、中身は学会の3つと同じです。
数え方が、ちがうだけ。
そして、超心理学が対象としない超常現象として、UFO・占星術・雪男・ピラミッドパワーが挙がっている。
名指しです。
超常現象という大きな箱があって、超心理学はその一部分にすぎない、という書き方になっています。
だから「ふしぎなことをぜんぶやっている学問」ではない。
外の線を、分野の内側にいる研究者が先に引いています。
同じ「超心理学」が、二つの英語に分かれている
日本語の見出し語はひとつですが、対応する英語は2つあります。
心理学の事典が、そこを分けて書いていました。
ひとつは metapsychology。この事典は、フロイトが1915年の『無意識について』のなかで、自分の体系にこの名をつけた、と書いています。日本語ではメタ心理学とも呼びます。
もうひとつが parapsychology。ラインが心霊研究の対象を整理してサイ現象と呼び、その実験心理学的な研究につけた名前のほうです。
いま検索されている「超心理学」は、ほぼこちらのほうです。
おなじ四文字が、べつの系統をふたつ指している。
「超心理学の本」と言われて話がかみ合わないことがあるのは、たぶんここです。
ラインがこの名前で研究をまとめたところまでは、資料にありました。ただ、parapsychology という語そのものが最初に使われた年は、たどりきれませんでした。
開けた資料に書いてあったのは、1934年の著書『ESP』が出たころから使われはじめた、というところまでです。
だから、境目の話をする前に、どっちの超心理学かを先に決めることになります。
学術の用語として、どこに載っているか
団体は、じっさいにあります。世界には超心理学協会があり、日本には日本超心理学会があります。それぞれのなりたちは、超心理学が学べる大学のほうに書きました。
ここで、ひとつくい違いが出ます。
『日本大百科全書』の「超心理学」は、1963年に日本超心理学会が設立された、と書いている。書いたのは、この学会の2代目の会長です。
学会の公式サイトのほうでは、1963年は研究会の発足で、学会の設立は1968年。
一次資料どうしが、ずれています。
僕には、直せません。
学会誌のほうは、たどれます。『超心理学研究』は1996年の創刊で、いまJ-STAGEに並ぶのは17巻まで。Print ISSN は 1343-926X。
その17巻が、1968年の第1回大会の予稿集の復刻版です。最初期の記録が読めるのは、そこだけ。
ただし、どの辞典にも載っているわけではない。
この語が載っている辞典は、まだらです。
脳科学辞典でこの語を検索すると、結果は0件でした。
見出し語が、ないのです。
それが、この語のいまの位置です。
今日の話をまとめると
超心理学は、心と物、心と心のあいだの、まだ物理で説明のつかない相互作用を、科学の手続きで調べる分野です。
扱うのは、ESPとPKとサバイバルの3つ。
この3つは、ぶれません。
扱わないものとして、UFO・占星術・雪男・ピラミッドパワーが、明治大学の講座で名指しで外してあります。
境目が、先に引いてある。定義としてもってかえるなら、そこだと思ってます。
今夜、3分だけ使ってください。「ふしぎな話」とひとまとめにしていたものを、紙に3つだけ書き出して、ESP・PK・サバイバルの3つに入るかどうかだけ判定する。
入らないものが出てきたら——それは超心理学の話ではない、ということです。
肯定と否定がどう応酬してきたかは、超心理学と心理学の違いに書いています。





