生まれ変わりの話を、うさんくさいと思って途中で閉じた人。
前世を語る子どもの記事を読んで、本当ならもっと知りたいと思った人。
どちらの言い分にも、材料はあります。
ただ、材料の置き場所がちがう。
先に結論を書きます。生まれ変わりの研究は実験ではありません。子どもへの聞き取り調査です。
ここを先に置くと、事例が実在することと、その調べ方にできないことが、きれいに分かれます。
順番に書きます。
大学の中に、その部署はある
バージニア大学医学部に、知覚研究部門という研究グループがあります。
DOPS と略されます。
つくったのは、イアン・スティーヴンソン。1967年です。
もう、60年ちかくあります。
いまも、精神科の側にあります。
おもな対象は、こころと体の関係。そして、体が死んだあとに意識がのこる可能性です。
2025年には、この部門のジム・タッカーが査読誌に総説を書いています。
まとまった研究は60年つづいていて、世界で2,500件を超える事例が調べられた。
冒頭に、そう書いてあります。
つくった本人の代表作は、日本語でも読めます。
『前世を記憶する子どもたち』が、2021年8月に角川文庫から出ています。
うさんくさい。
それで終わらせると、ここが見えません。
語り出すのは2歳、話さなくなるのは7歳ごろ
集まった話には、形があります。
DOPS の公式ページによると、子どもが前世の記憶を語り出すのは、おおむね2歳から5歳です。
そして7歳ごろには、うすれていきます。
インドで続いている調査から書かれた2011年の論文も、近い数字を出しています。
語り出すのが2歳から4歳。
自分から言わなくなるのが、5歳から8歳。
10歳を超えて語りつづけることは、まれです。
窓は、数年しか開きません。
数字の出どころも、そろえておきます。
2,500件超は、DOPS と2025年の総説が出している数です。
同じ2011年の論文が挙げた約2,600件のほうは、生まれ変わりを信じる文化と信じない文化の両方を含む、世界の集計になります。
数え方がちがうので、足し合わせません。
限界を書いたのは、批判する側ではなかった
この分野のいちばん弱いところは、1980年に、調べている本人たちが書いています。
批判する側ではありません。
インドの精神医学の査読誌に載った、やり方についての論文です。
そこに、こうあります。
調査に入るのは、たいてい子ども側の家族と、前世の人物とされる側の家族が、すでに顔を合わせたあとになる。
つまり、聞き取りを始めたときには、ふたつの家の記憶が、もう混ざりうる。
話す人は、こまかいところを忘れていることもあります。
実際には起きなかったことを「覚えている」と言うこともある。
論文は、それを脚色と呼びます。
同じ論文は、話の食いちがいに名前まで付けました。
片方が見ていないだけの欠落の不一致と、同じ出来事を見たと言いながら中身が食いちがう不調和の不一致です。
さらに、ほかの説明のしかたを、自分で8つ並べています。
空想、詐欺、遺伝的記憶、潜在記憶、記憶錯誤、人格化をともなうESP、憑依、そして生まれ変わり。
生まれ変わりは、8つのうちの1つとして置かれています。
いちばん強いとされた1件は、名前も死因も合っていない
1994年、うたがう側の哲学者レナード・エンジェルが、批判の論文を出しました。
とりあげたのは、スティーヴンソンの『Twenty Cases』のうち、いちばん強いとされたレバノンの少年イマード・エラワーの話です。
エンジェルは、これを6点で崩しています。
決め手は、名前でした。
両親が最初に伝えたのは、前世はクリビー村のマフムード・ブハムジーで、妻はジャミラ、口論のあとトラックにはねられて死んだ、という話。
ところが、あとから特定された前世の人物は、イブラヒム・ブハムジーでした。
名前がちがう。
イブラヒムは、生涯結婚していません。
ジャミラという妻は、いなかった。
事故で死んでもいない。
25歳のとき、結核で亡くなっています。
それでも57項目が、確かめる前の記憶として表に整理されています。
もとの記録がどんな形だったかは、示されていません。
ここまでが、1点目です。
この分野は、雑誌ではなく本で証拠を積んできました。
2024年の論文が数えたところ、その大著に載った頭と首まわりの症例は75件。1件あたり、平均9ページありました。
学術誌に載った同じ種類の症例は19件で、平均2.1ページです。
くわしい記録は、本のほうです。
僕が原文で読み切ったのは、6点のうち最初の2点までです。
のこりは読んでいないので、書きません。
日本の症例と、創始者が切り離したもの
日本にも、査読誌に載った症例があります。
2023年、中部大学の大門正幸が報告したものです。
子どもが、戦艦大和で戦って死んだと語りました。
この話のちがいは、前世の人物が特定される前に、話したことが記録され、調査が始まっている点です。
米国のジェームズ・レイニンガーの話と、つくりが似ている。
論文じしんが、そう書いています。
もうひとつ、書いておきます。
つくった本人が、前世療法を自分の研究から切りはなしました。
1994年に米国臨床催眠学会誌へ出した論文の題が、「心理療法家の誤謬の一例:『前世』への催眠退行」でした。
子どもが自分から語り出すのを追うことと、大人を催眠にかけて前世を語らせること——このふたつは、同じではない。
つくった人が、そこに線を引きました。
今日の話をまとめると
生まれ変わりの研究は、実験ではなく聞き取り調査です。
だから、2,500件という数と、両家が会ったあとに着くという限界が、同時に成り立ちます。
信じる側にも、否定する側にも、ここは動かせません。
いちばん強いとされた1件は、名前も、妻がいたことも、死因も合っていなかった。
そして、そう言われる14年前に、限界のほうは研究者じしんが書いていた。
見るところは、どちらの陣営でもなく、調べ方のほうです。
今夜、3分だけ使ってください。生まれ変わりの話をひとつ選んで、「調べた人が現場に着いたのは、いつか」だけを探す。
書いてなければ、その話は、まだ手前です。
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