成功者ほど月初参りに行く理由。潜在意識に与える心理学的な効果

成功者ほど月初参りに行く理由。潜在意識に与える心理学的な効果

効いているのは拝殿の前ではなく、そこまでの道のり。歩きながら、今月の決め方が決まる。
効いているのは拝殿の前ではなく、そこまでの道のり。歩きながら、今月の決め方が決まる。

月の初めに決めたことが、月末には何ひとつ残っていない。そういう月を、何回も越えてきました。

僕もそうです。「今月こそ」という記憶だけが、毎月積み上がっていく。

先に結論を書きます。月初参りが効いているのは、願いが届くからではなく、「毎月1日、あの場所で、今月の決め方を決める」という予定が生活に固定されるからです。

そして、いちばん見落とされているところ。効いているのは拝殿の前ではなく——その行き帰りの道のりのほうです。

順番に書きます。

「毎月、同じ日に手を合わせる」は、参る側の思いつきではない

月初参りは、朔日参り、一日参りとも呼ばれます。読みは、げっしょまいり。毎月1日に神社へ行って、その月のことを祈る習慣です。

日供祭 / 毎日毎日行われるお祭り月次祭 / 毎月月ごとの決まった日に行われるお祭り。小祭にあたる例祭 / 毎年その神社にとって最も重要なお祭り。大祭にあたる出典: 神社本庁「恒例祭」
神社の側には、毎日・毎月・毎年の恒例祭がもとから入っている。月初参りは、その「毎月」に人が合わせている形。

個人が始めた験担ぎ。そう思っている人は、多いです。でも、神社の側にも同じ形があります。

神社本庁は、恒例のお祭りの一覧に「月次祭」を挙げています。月ごとの決まった日に行われるお祭りです。

決まった日に決まった形で手を合わせる仕組みは、もともと制度の側にある。参る人が、それに合わせているだけです。

1日という日付そのものが、行動を動かしている

2014年に、時間の区切りと行動の関係を調べた研究があります。

区切りが来る週初・月初・年初・誕生線が引かれる時間が別の期間に分かれ置いてくるそこまでの不出来が前の期間に残る引いて見る生活を細部でなく全体で見る区切りが来る週初・月初・年初・誕生日線が引かれる時間が別の期間に分かれる置いてくるそこまでの不出来が前の期間に残る引いて見る生活を細部でなく全体で見る
フレッシュ・スタート効果。日付の区切りが、過去の不出来を前の期間に置いてこさせる。

ダイエットに関するGoogle検索の数。大学のジムの来館記録。目標に取り組むと自分で約束した件数。3つとも、同じ動き方でした。

週の初め、月の初め、年の初め、新学期、誕生日、祝日。こうした区切りの直後に、はっきり増える。

論文はこれを「フレッシュ・スタート効果」と呼んでいます。

区切りは、時間の流れに線を引く。線が引かれると、そこまでの自分の不出来を、前の期間に置いてこられる。

1日は、先月の自分を先月に置いてこられる日だということです。

「今月こそ」が毎月出てくるのは、意志が弱いからではありません。日付のほうに、そういう働きがある。なら、使う側に回ったほうがいい。

効いているのは、拝殿より、行き道

歩くことと考えることの関係を調べた、2014年の実験があります。座った状態と歩いた状態を、4つの実験で比べたものです。

使い道を挙げる(広げる)81%答えが1つに決まる23%出典: Oppezzo & Schwartz 2014・実験1(参加者のうち成績が上がった人の割合)
歩くと成績が上がった人の割合。歩行は「広げる側」にだけ効いている(実験1)。

実験1は、ひとつの物の使い道をできるだけ挙げる課題。歩いたとき、参加者の81%で成績が上がりました。

一方、答えが1つに決まる課題で上がったのは23%。歩くことは、広げる側にだけ効いています。

実験4では、室内で座る・室内で歩く・外を歩く・外を車椅子で押してもらう、の4つを比べています。いちばん質の高い答えが出たのは、外を歩いた条件でした。

……神社までの道のりは、この条件をほとんどそのまま満たしています。

外にいる。歩いている。行き先が決まっていて、途中で手を止める用事がない。今月をどう過ごすかを考えるのに、机の前より参道のほうが向いています。

二礼二拍手一礼のあいだ、人は誰と話しているのか

神社本庁は、参拝の作法について「永い間の変遷を経て、現在『再拝(礼)・二拍手・一拝(礼)』の作法が基本形となっています」と書いています。

命令する「今月こそやる」と念じる。向きは変わらない入力を変える場所と順番と言葉を先に変える。決め方のほうが動く命令する「今月こそやる」と念じる。向きは変わらな入力を変える場所と順番と言葉を先に変える。決め方のほうが動く
潜在意識には命令が効かない。変わるのは入力のほう。

そのすぐあとに、こう続く。そこにどう心を伴わせるかは参拝される皆さんの心の持ち様ではないか、と。

作法を定めている側が、形の前提にある心は本人のものだ、と言っている。では、あの数十秒のあいだ、人は何をしているのか。

目を閉じて、声には出さず、今月どうするかを自分の言葉で並べています。

神社に向かって話しているように見える。でも、聞いているのは自分です。

潜在意識に、命令は効きません。念じたところで、向きは変わらない。

変わるのは、入力のほうです。場所と順番と言葉を先に変えると、決め方のほうが動きます。

言葉の意味をそろえておきたい人は、潜在意識と顕在意識の違いを先に読んでください。

儀式の研究には、撤回された論文がある

儀式が不安を下げて成績を上げる、という2016年の論文があります。その論文は、2024年に撤回されています。

2016儀式が不安を下げて成績を上げる、という論文2017事前登録の脳波実験。失敗時の脳の反応が下がる20242016年の論文が撤回2016儀式が不安を下げて成績を上げる、という論文2017事前登録の脳波実験。失敗時の脳の反応が下がる20242016年の論文が撤回
儀式の研究で、いま引けるものと引けないもの。

引くならこちらです。2017年に、手順を先に登録したうえで行われた脳波の実験があります。

参加者は、自分で決めた意味のない動作を、1週間、家でくり返しました。そのあと実験室で課題をやらせ、脳波を測っています。

失敗したときに出る脳の反応が、儀式のあとで小さくなっていた。

ただし、成績そのものは変わりません。上がりも、下がりもしない。

儀式が変えたのは、成績ではなく、失敗したときの自分の反応です。

月初参りの効き方の説明として、たぶんいちばん正確だと思ってます。行ったから今月がうまくいく、ではない。月の途中でつまずいたときに、崩れにくくなる。

社員を連れて行く経営者がいる

売上の大きい経営者で、社員を連れて月初に参ることを定例にしているところがあります。大勢で祈ると力が増える。そういう話では、ないです。

「自分の計画」の形成績は上がるやり取りは増えない話せない状態にしても落ちない「みんなの計画」の形成績は上がる協力しながら進む話せない状態にすると落ちる「自分の計画」の形成績は上がるやり取りは増えない話せない状態にしても落ちない「みんなの計画」の形成績は上がる協力しながら進む話せない状態にすると落ちる
3人組の実験。どちらも成績は上がるが、効き方の中身が違う。

3人組で計画を立てさせた2017年の実験があります。「自分の計画」の形にした組と、「みんなの計画」の形にした組を比べたものです。

どちらも成績は上がりました。ちがったのは、やり取りのほうです。協力しながら進めたのは、「みんなの計画」の組だけでした。

続きの実験では、話せない状態にしています。成績が落ちたのは、「みんなの計画」の組のほうでした。みんなで決めた計画は、話せることとセットでしか効かない。

場面 そこで起きていること
行き道 歩きながら、今月やることを出す
拝殿の前 出したものを、自分の言葉で1つに絞る
帰り道 絞ったものを、いつやるかまで落とす

ひとつだけ、落とし穴があります。2009年の4つの実験で、「なりたい自分」に関わる予定を他人に気づかれた人は、そのあとの行動が減りました。

だから、道すがら話すのは「今年こそ変わる」ではないほうがいい。いつ、どこで、何をするか。そこまで落として話す。

今日の話をまとめると

月初参りが効いているのは、願いが届くからではありません。

1日先月の自分を先月に置いてくる行き道歩きながら、今月やることを出す拝殿の前自分の言葉で1つに絞る帰り道いつやるかまで落とす1日先月の自分を先月に置いてくる行き道歩きながら、今月やることを出す拝殿の前自分の言葉で1つに絞る帰り道いつやるかまで落とす
月初参りで効いているのは、この4つ。

1日という日付が、先月の自分を先月に置いてこさせる。行き道の歩行が、去年とちがう案を出させる。二礼二拍手一礼の数十秒が、それを自分の言葉に絞らせる。帰り道が、それを予定に変える。

効いているのは、この4つです。

今夜、3分だけ使ってください。次の1日に行く神社を、ひとつ決める。

いつ、どこで、を先に決めておくと実行率が上がることは、94の独立した検証で確かめられています。効果の大きさは、中くらいから大きい。

一人でも効きます。ただ、誘える相手がいるなら、誘ったほうが強いです。

願うことと結果の関係をもう少し追いたい人は、引き寄せの法則に科学的根拠はあるのかを読んでください。

出典・参考文献

  1. 神社本庁「恒例祭」(月次祭=月ごとの決まった日に行われるお祭り/日供祭=毎日行われるお祭り)
  2. 神社本庁「参拝方法」(再拝・二拍手・一拝が基本形/形に心をどう伴わせるかは本人次第)
  3. Dai H, Milkman KL, Riis J. The Fresh Start Effect. Management Science 2014;60(10):2563-2582.
  4. Oppezzo M, Schwartz DL. Give your ideas some legs: The positive effect of walking on creative thinking. J Exp Psychol Learn Mem Cogn 2014;40(4):1142-1152.
  5. Hobson NM, Bonk D, Inzlicht M. Rituals decrease the neural response to performance failure. PeerJ 2017;5:e3363.
  6. Brooks AW, et al. Don't stop believing: Rituals improve performance by decreasing anxiety. Organ Behav Hum Decis Process 2016;137:71-85.(2024年に撤回された論文)
  7. Thürmer JL, Wieber F, Gollwitzer PM. Planning and Performance in Small Groups. Frontiers in Psychology 2017;8:603.
  8. Gollwitzer PM, Sheeran P, Michalski V, Seifert AE. When Intentions Go Public. Psychological Science 2009;20(5):612-618.
  9. Gollwitzer PM, Sheeran P. Implementation Intentions and Goal Achievement: A Meta-analysis. Advances in Experimental Social Psychology 2006;38:69-119.

月初参りを勧めるために集めた資料ではありません。撤回された論文も、効果が出なかった側の結果も、同じ基準で並べています。

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