顕在意識とは|一度に持てるのは約4項目、それでもここでしかできない3つの仕事

顕在意識とは|一度に持てるのは約4項目、それでもここでしかできない3つの仕事

席は小さく、置けるのは4つほど。それでも、ここに置いたものだけが脳の全体に届く。
席は小さく、置けるのは4つほど。それでも、ここに置いたものだけが脳の全体に届く。

朝、やることが頭の中に並んでいて、どれにも手がつかない。

会議で人の話を聞きながら、さっき言われた数字が、もう消えている。

僕は、どちらも覚えがあります。

先に結論を書きます。顕在意識とは、いま自分で気づいていて、言葉にして報告でき、考えや行動に自由につかえる情報のことです。

顕在意識が一度にもてるのは、約4項目です。

頭の中の置き場が4つ。ここでは、それを「席」とよびます。

席は、小さいです。

それでも、ここでしかできない仕事が3つあります。

順番に書きます。

「顕在意識」は、辞書で見出しが見つからない

コトバンクで横断検索をかけると、「潜在意識」の見出しはあります。

見出しがある意識=自分自身の精神状態の直観(大辞泉・心理学の語義)意識=個人によって体験され、気づかれていること(日本大百科全書)潜在意識=活動はしているが自覚されない意識(大辞泉)見出しが見つからない顕在意識。コトバンクの横断検索に見出し語がない潜在意識の反対側を指す、日常の言いだから中身は、辞書の「意識」を見に行く見出しがある意識=自分自身の精神状態の直観(大辞泉・心理学の語義)意識=個人によって体験され、気づかれていること(日本大百科全書)潜在意識=活動はしているが自覚されない意識(大辞泉)見出しが見つからない顕在意識。コトバンクの横断検索に見出し語がない潜在意識の反対側を指す、日常の言い方だから中身は、辞書の「意識」を見に行く
辞書に載っているのは「意識」と「潜在意識」。顕在意識は、その反対側を指す日常の言い方。

「顕在意識」の見出し語は、見つかりませんでした。

潜在意識のほうには、「活動はしているが自覚されない意識」と書かれています。精神分析などの言い方です。

つまり「顕在意識」は、潜在意識の反対側をあらわすために、ふだんつかわれている言い方なんですよね。

辞書の言葉では、ないです。

だから中身は、辞書の「意識」を見にいきます。

デジタル大辞泉の、心理学・哲学の語義ではこうです。

「自分自身の精神状態の直観」。「自分の精神のうちに起こることの知覚」。

日本大百科全書のほうは、もっと短い。「個人によって体験され、気づかれていること」。

気づかれている。顕在意識と潜在意識をわけているのは、ここです。

脳の中では「全体に広がった状態」を指す

では、脳の側から見ると、なんなのか。

並列に動くたくさんのネットワークが、無意識のまま同時に動いている注意で増幅そのうちひとつの情報が、上からの注意で強められる全体に広がる脳の広い範囲が、そろって活動する状態になる報告できるどこからでも使えるこの状態を、意識として体験する並列に動くたくさんのネットワークが、無意識のまま同時に動いている注意で増幅そのうちひとつの情報が、上からの注意で強められる全体に広がる脳の広い範囲が、そろって活動する状態にな報告できるどこからでも使えるこの状態を、意識として体験する
2001年の枠組み。並列に動く無意識の処理のうち、注意で増幅されて全体に広がったものが、意識になる。

2001年に、意識の研究の土台になる枠組みが出ています。グローバル・ニューロナル・ワークスペース仮説です。

脳の中では、たくさんのネットワークが並列に動いています。そのほとんどは、無意識のままです。

そのうちのひとつの情報が、注意で増幅されて、脳全体に広がる。

この「全体でつかえるようになった状態」を、僕たちは意識として体験している。仮説は、そう置いています。

2005年の整理によると、意識にのぼったときは、前頭頭頂や内側側頭をふくむ、広い範囲がいっしょに働く。

気づかないままのときは、視覚野などの、せまいところしか活性化しない。

脳科学辞典が、意外な数字をあげています。

小脳には、約800億のニューロンがあります。大脳と視床の系が約200億なので、4倍です。

でも、小脳をぜんぶ取りのぞいても、意識のレベルにも内容にも、ほとんど影響が出ません。

数が多い側が、顕在意識ではない。——つながって、全体に広がった側が顕在意識です。

一度にもてるのは、約4項目

席の数は、すくないです。

7±21956年の目安厳密な容量限界ではなく、大まかな目安だった約4実際の容量(3〜5)2001年に多数のデータをまとめ直した値1〜4意識の一瞬に持てる項目全体に届くことの代償かもしれな出典: Miller 1956/Cowan 2001/Baars 20137±21956年の目安厳密な容量限界ではなく、大まかな目安だった約4実際の容量(3〜5)2001年に多数のデータをまとめ直した値1〜4意識の一瞬に持てる項目全体に届くことの代償かもしれない出典: Miller 1956/Cowan2001/Baars 2013
1956年の「7」は目安で、まとめ直すと約4。意識の一瞬に持てる項目も1〜4個。

1956年のよく知られた論文が、7±2という数字を出しています。マジカルナンバー7です。

ただ、2001年にコーワンが、たくさんのデータをまとめなおして、こう書いています。

あの7は、厳密な容量限界というより、大まかな目安であり、レトリックだった。

7は、めやすだったわけです。

実際の純粋な容量は、平均約4チャンク。3〜5のあいだです。

チャンクは、意味のまとまりのことです。ばらばらの4つとは、かぎりません。

たがいに無関係な項目なら、一瞬の意識にもてるのは1〜4個とされています。

席が約4つというのは、こちらの数のほうです。

この小ささは、脳全体に届くことの代償かもしれない。2013年の論文は、そう見ています。

脳全体に広がった状態が続くのは、約100〜200ミリ秒とされています。

ひとつの広がりが続く長さです。席においたものが0.2秒で消える、という話ではありません。

保ち続ける仕事は、この広がりをなんども起こしなおすことになります。

だから、しんどいわけです。

席は、4つぶん。そのかわり、そこにおいたものは、脳のどこからでもつかえます。

そういう作りに、なっています。

小さいのに、ここでしかできない仕事が3つある

では、その小さい席は、なんのためにあるのか。

保ち続ける情報を持続的に保持する。無意識の処理の影響は、ほとんどの場合弱く、続かない新しく組み合わせる操作を新しい組み合わせで走らせる。作業記憶に重い負荷がかかる自分から始める意図した行動を、自発的に起こす出典: Dehaene & Naccache 2001/脳科学辞典 2016
意識がないとできない3つの仕事。小さい席は、この3つのためにある。

2001年の枠組みは、意識の理論が組み込むべき観察を3つ、あげています。

ひとつ目。相当な量の処理は、意識なしでできる。

ふたつ目。注意は、意識の前提条件になっている。

みっつ目。それでも、意識がないとできない仕事がある。情報を保ち続けること、操作を新しく組み合わせること、意図した行動を自分から起こすことの3つです。

ひとつ目に、もどります。

無意識でも、こみいった処理はできます。

ただ、ほとんどの場合、無意識の処理が行動に与える影響は、意識の処理にくらべて弱く、時間的にも持続しない。脳科学辞典は、そう説明しています。

意識にのぼった情報は、長期記憶にも、体を動かす段どりにも、抽象的な思考にもつかえる。だから、圧倒的に有用なのだ、と。

ゆっくり考えるほうの処理は、作業記憶に重い負荷をかける。2013年の総説は、そう定義しています。

席がふさがっていると、組み合わせる仕事から先に落ちます。

そこが、いちばんもったいないところです。

「動こう」と思う前に、準備は始まっている

1983年のリベットの実験です。5人の被験者に、自分のタイミングで指を動かしてもらい、「動かそうと思った」時刻を報告させました。

約800ms前事前に計画があったときの準備電位の立ち上がり約350ms前自発的に動かしたときの準備電位の立ち上がり(平均)約150ms前自発のときの、先行の最小値0ms「動かそうと思った」と報告された時刻約800ms前事前に計画があったときの準備電位の立ち上がり約350ms前自発的に動かしたときの準備電位の立ち上がり(平均)約150ms前自発のときの、先行の最小値0ms「動かそうと思った」と報告された時刻
1983年の実験。脳の準備は、「動かそう」と気づく前に始まっていた。

脳の準備電位が立ちあがるのは、その報告より、平均で約350ミリ秒はやかった。最小でも、約150ミリ秒。

事前に計画があったときは、平均で約800ミリ秒です。

論文の副題は「自由な随意行為の無意識的な開始」。

動作の準備は、気づく前に始まっているのです。

思ったから、動いたのではない。

だから、「動作をひとつずつ起こすところ」ではないんですよね。

2017年の論文は、「意識」という語が2つのはたらきを混ぜて指している、と整理しました。

えらんだ情報を脳全体に届けるはたらきと、その計算を自分で見はって、たしかさや誤りの感じをもつはたらきです。

顕在意識の仕事は、合図を出すことではありません。

何を保ち、何を組み合わせるかを決めて、全体に知らせるほうです。

今日の話をまとめると

顕在意識は、辞書に見出しがありませんでした。中身は、辞書の「意識」で足ります。

項目を頭に並べたまま約4つの席が、保ち続ける仕事で埋まる。組み合わせる仕事が、先に落ちる残す1つを紙に書く保ち続ける役目を紙に渡す。空いた席で、組み合わせて、自分から始める項目を頭に並べたまま約4つの席が、保ち続ける仕事で埋まる。組み合わせる仕事が、先に落ちる残す1つを紙に書く保ち続ける役目を紙に渡す。空いた席で、組み合わせて、自分から始める
この記事の着地。減らすのは、やることではなく、席に置いておく数。

一度にもてるのは、約4項目。そのかわり、おいたものは脳全体に届きます。

そして、保ち続ける・組み合わせる・自分から始める、の3つは、ここでしかできない。

今夜、3分だけ使ってください。頭の中に並んでいる項目を、ぜんぶ紙に書き出す。そのうえで、明日の朝に残すものを、ひとつだけ丸で囲む。

減らすのは、やることではありません。席においておく数のほうです。

そこを、まちがえない。

保ち続ける役目を紙に渡すと、組み合わせる仕事に、席が空きます。

潜在意識との線引きは、潜在意識と顕在意識の違いに書きました。言葉の出どころのほうは、潜在意識と無意識の違いで追えます。

出典・参考文献

  1. Dehaene S, Naccache L. Towards a cognitive neuroscience of consciousness: basic evidence and a workspace framework. Cognition 2001;79(1-2):1-37.
  2. Baars BJ. Global workspace theory of consciousness: toward a cognitive neuroscience of human experience. Prog Brain Res 2005;150:45-53.
  3. Baars BJ, Franklin S, Ramsoy TZ. Global workspace dynamics: cortical "binding and propagation" enables conscious contents. Front Psychol 2013;4:200.
  4. Cowan N. The magical number 4 in short-term memory: a reconsideration of mental storage capacity. Behav Brain Sci 2001;24(1):87-114.
  5. Miller GA. The magical number seven plus or minus two: some limits on our capacity for processing information. Psychol Rev 1956;63(2):81-97.
  6. Libet B, Gleason CA, Wright EW, Pearl DK. Time of conscious intention to act in relation to onset of cerebral activity (readiness-potential). The unconscious initiation of a freely voluntary act. Brain 1983;106(Pt 3):623-642.
  7. Dehaene S, Lau H, Kouider S. What is consciousness, and could machines have it? Science 2017;358(6362):486-492.
  8. Evans JS, Stanovich KE. Dual-Process Theories of Higher Cognition: Advancing the Debate. Perspect Psychol Sci 2013;8(3):223-241.
  9. 土谷尚嗣. 意識. 脳科学辞典 2016(DOI 10.14931/bsd.7118).
  10. 小学館. 意識. デジタル大辞泉/日本大百科全書(ニッポニカ)(コトバンク収録).
  11. 小学館. 潜在意識. デジタル大辞泉/精選版 日本国語大辞典(コトバンク収録).

「顕在意識」の見出しは辞書で見つからなかったので、かわりに「意識」を脳科学がどう測ってきたかの一次資料を並べました。数字は、抄録か本文を開いて確かめたものだけです。

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