潜在意識の本|図書館の目録が分けた5つの棚と、54年で棚を移った1冊

潜在意識の本|図書館の目録が分けた5つの棚と、54年で棚を移った1冊

同じ訳者、同じ314ページ。それでも1968年と2022年で、置かれた棚のほうが変わっている。
同じ訳者、同じ314ページ。それでも1968年と2022年で、置かれた棚のほうが変わっている。

「潜在意識の本」で検索すると、成功法則の本と、脳の研究書と、ユングの著作が、同じ画面に並びます。

どれから読めばいいのかを決められないまま、画面を閉じた人。買ってはみたけれど、書いてあることが本ごとに違っていた人。

僕も、そこで止まっていました。

先に結論を書きます。潜在意識の本は、ひとつの棚にありません。国立国会図書館の目録は、それを5つの棚に分けています。

どの棚に置かれた本なのかがわかると、読む順番も決まります。

順番に書きます。

同じ1冊が、54年で心理学の棚から人生訓の棚へ移った

マーフィーの『眠りながら成功する』。副題は「自己暗示と潜在意識の活用」。

1968年版件名標目は「潜在意識」と「精神療法」分類はNDC 145.1(心理学の棚)請求記号は 145.1-cM97n-O2022年 新装版件名標目は「人生訓」と「潜在意識」分類はNDC10版 159(人生訓.教訓)請求記号は US51-M20741968年版件名標目は「潜在意識」と「精神療法」分類はNDC 145.1(心理学の棚)請求記号は 145.1-cM97n-O2022年 新装版件名標目は「人生訓」と「潜在意識」分類はNDC10版 159(人生訓.教訓)請求記号は US51-M2074
同じ訳者、同じ314ページ。それでも54年のあいだに、置かれた棚が変わった。

日本語版が出たのは、1968年。訳は大島淳一、本文は314ページ。

このときつけられた件名標目は、「潜在意識」と「精神療法」。分類はNDC 145.1です。

心理学の棚でした。

2022年3月に、同じ本の新装版が出ています。

訳者は同じ。

本文も、同じ314ページ。

件名標目は「人生訓」と「潜在意識」。分類はNDC10版の159、「人生訓.教訓」です。

請求記号も、「145.1-cM97n-O」から「US51-M2074」に変わりました。

記号ごと、動いています。

心理学の棚から、人生訓の棚へ。

54年かけて、この本はひっこしています。

原著は1963年、アメリカの Prentice-Hall から出た The Power of Your Subconscious Mind。原タイトルが書誌に載っているのは、開いた2件のうち2022年の新装版だけでした。

ただし、本文は突き合わせていません。

中身まで同じだとは、言えないです。

それでも、目録のほうは動いています。

「潜在意識」の典拠に、いま載っている出典は2件だけ

件名には、典拠レコードがついています。どの語を見出しにするかを決めた記録です。

2件典拠の出典欄に載っている資料ウィリアムズの本と、広辞苑 第5版11年ウィリアムズの本のほうが早い1957年刊・114ページ・件名は潜在意識だけ出典: Web NDL Authorities「潜在意識」典拠2件典拠の出典欄に載っている資料ウィリアムズの本と、広辞苑 第5版11年ウィリアムズの本のほうが早い1957年刊・114ページ・件名は潜在意識だけ出典: Web NDLAuthorities「潜在意識」典拠
「潜在意識」の典拠の出典欄に載っているのは2件。『眠りながら成功する』の名前はない。

「潜在意識」のレコードが作られたのは、1980年6月20日。最後の更新は、2017年7月13日。

上位の語は「意識」、関連する語は「無意識」。そして、分類は145.1です。

ひっかかったのは、出典の欄です。

そこにならんでいるのは、2件だけ。

『潜在意識の活かし方』(J.K.ウィリアムズ著・藤井良訳)と、『広辞苑 第5版』。

ただし、『広辞苑 第5版』が出たのは1998年11月です。

レコードより、18年あと。

つまり、つくったときの参照記録ではないです。

あとの更新で足されたものが、まざっています。

そして、この記事のきっかけになった『眠りながら成功する』は、入っていません。

そこに、名前がない。

ウィリアムズの本は1957年、ダイヤモンド社から出ています。114ページ。件名標目は「潜在意識」ひとつだけ。

ウィリアムズの本が出たのは、『眠りながら成功する』の邦訳より11年早いです。

ここが、意外でした。

しかも、ウィリアムズの本のほうは読めます。

国立国会図書館デジタルコレクションでは館内限定公開ですが、個人送信の対象です。登録をすれば、自宅から開けます。

1968年版のほうは、個人送信の対象外でした。

館内でしか、読めません。

出典の欄に載っているウィリアムズの本は読めて、『眠りながら成功する』の1968年版は読めない。

さかさまなんですよね。

目録の上では、「潜在意識」と「無意識」は別の名前だった

同じしくみで、「無意識」の典拠も引けます。

「潜在意識」だけで引く件名が「無意識」の本が落ちる。同じ145.1の棚にあっても、出てこない「無意識」でも引く英語の Subconsciousness は、目録では「無意識」の側にぶらさがっている「潜在意識」だけで引く件名が「無意識」の本が落ちる。同じ145.1の棚にあっても、出てこない「無意識」でも引く英語の Subconsciousness は、目録では「無意識」の側にぶらさがっている
日本語では2つ、英語では1つ。同じ145.1の棚の中でも、件名は2つに割れる。

作られた日は、同じ1980年6月20日。更新は2017年6月8日。分類は、やはり145.1です。

この2つは、関連する語として、おたがいを指しています。

ただし、別々の名前として立っている。

そこは、まじりません。

ところが、別名の欄に英語がひとつ入っていました。

Subconsciousness。

日本語で「潜在意識」と訳されてきた語が、目録では「無意識」の側にぶらさがっています。「無意識」の典拠は、米国議会図書館の件名 sh85129414 とも対応づけられています。

日本語では2つ、英語では1つ。

——ここが、本を探すときにいちばん効いてきます。

2語の使い分けそのものは、潜在意識と無意識の違いに書きました。

「潜在意識」と「無意識」が同じ本に両方つくことは、この記事で開いた本にはありませんでした。だから、同じ145.1の棚の中でも、件名が2つに割れます。

同じ検索語で出てくる本が、5つの棚に散っている

ほかの本も、1件ずつひらきました。

5つ分類のあたま3桁で分かれた棚141・145・146・159・280145.11968年版とウィルソンが並ぶ棚件名は「潜在意識」と「無意識」に割れる0カーネマンにつく2語の件名件名は思考・意思決定・直覚だけ出典: 国立国会図書館サーチ 各書誌の件名とNDC5つ分類のあたま3桁で分かれた棚141・145・146・159・280145.11968年版とウィルソンが並ぶ棚件名は「潜在意識」と「無意識」に割れる0カーネマンにつく2語の件名件名は思考・意思決定・直覚だけ出典: 国立国会図書館サーチ各書誌の件名とNDC
同じ検索語で1枚の画面に並ぶ本が、目録では別々の場所に置かれている。
本(刊行年) 件名標目 分類
マーフィー『眠りながら成功する』新装版(2022) 人生訓/潜在意識 NDC10版 159
下條信輔『サブリミナル・マインド』(1996) 潜在意識/知覚/認知科学 NDC9版 141.27
ウィルソン『自分を知り、自分を変える』(2005) 無意識 NDC9版 145.1
カーネマン『ファスト&スロー』(2012) 思考/意思決定/直覚 NDC9版 141.5
ユング『心理学と錬金術』新装版(2017) 精神分析/異常心理学/宗教心理学/錬金術 NDC10版 146.15
立花隆『自分史の書き方』(2013) 自叙伝 NDC9版 280.7

分類のあたま3桁でまとめると、141・145・146・159・280 の5つ。

ウィルソンの本は、1968年版と同じ145.1の棚です。それでも件名標目は「無意識」ひとつ。

カーネマンの本には、「潜在意識」も「無意識」もつきません。

そこには、ならんでいないです。

ユングの本にも、どちらもありません。

ばらばらなんですよね。

読んで混乱するのは、あたりまえでした。

あなたのせいじゃないです。

読む順番は、番号の順ではない

じゃあ、どれから読むのか。

159人生訓の棚。まず通して読む141普通心理学の棚。件名が学問の言葉になる145・146異常心理学と臨床心理学の棚280伝記の棚。手を動かす側へわたる159人生訓の棚。まず通して読む141普通心理学の棚。件名が学問の言葉になる145・146異常心理学と臨床心理学の棚280伝記の棚。手を動かす側へわたる
読む順番は、番号の順ではない。159の人生訓から始める。番号は目録の分類。

僕がすすめるのは、読みやすさの順です。番号の順ではないです。

むずかしくないです。

はじめは159、人生訓の棚。『眠りながら成功する』の新装版です。

次が141、普通心理学の棚。下條信輔の『サブリミナル・マインド』です。件名は潜在意識・知覚・認知科学の3つ。

件名の言葉が、ここで学問のほうへ入れかわります。

そのあとが145と146。異常心理学と、臨床心理学の棚です。ウィルソンと、ユング。

最後が280、伝記の棚。立花隆の『自分史の書き方』。

心理学の棚ですらありません。

読むだけの側から、手を動かす側へわたるための1冊です。

ここが、出口です。

今日の話をまとめると

潜在意識の本は、ひとつの棚にありません。

並んだ順に買う棚のちがう本を、同じ話として読むことになる。書いてあることが食いちがう159から並べる159から141へ、145と146へ、最後に280へ。番号の順ではなく、この順で読む並んだ順に買う棚のちがう本を、同じ話として読むことになる。書いてあることが食いちがう159から並べる159から141へ、145と146へ、最後に280へ。番号の順ではなく、この順で読む
この記事の着地。選ぶ手がかりは、帯の言葉ではなく、件名標目とNDCの2行。

同じ『眠りながら成功する』が、1968年には145.1の棚に、2022年には159の棚に置かれています。訳者も、314ページというあつさも、そのままなのに。

「潜在意識」の典拠の出典欄に載っているのは、1957年のウィリアムズと、『広辞苑 第5版』の2件でした。

迷ったら、159の人生訓の棚から本を選べばいい。159から141へ、145と146へ、最後に280へ。

今夜、3分だけ使ってください。国立国会図書館サーチを開いて、いま気になっている1冊の書誌を出す。

件名標目とNDCの、2行だけ見てください。

その本が、いまどの棚に置かれているのかが、そこに出ています。

それだけで、選べます。

言葉の意味からそろえたい人は、潜在意識とはを先に読んでください。

書誌から先に開いている理由は、プロフィールに置いてあります。

出典・参考文献

  1. 国立国会図書館サーチ 書誌詳細「眠りながら成功する : 自己暗示と潜在意識の活用」ジョセフ・マーフィー著, 大島淳一訳. 産業能率短期大学出版部, 1968.(書誌ID 000001109429・NDC 145.1・請求記号 145.1-cM97n-O)
  2. 国立国会図書館サーチ 書誌詳細「眠りながら成功する : 自己暗示と潜在意識の活用」新装版. 産業能率大学出版部, 2022.(書誌ID 032022748・NDC10版 159・請求記号 US51-M2074)
  3. Murphy J. The Power of Your Subconscious Mind. Englewood Cliffs, N.J.: Prentice-Hall, 1963.(Internet Archive 所蔵レコード)
  4. 国立国会図書館 Web NDL Authorities 件名標目「潜在意識」典拠レコード(典拠ID 00570801・作成1980-06-20・最終更新2017-07-13・出典欄は2件)
  5. 国立国会図書館 Web NDL Authorities 件名標目「無意識」典拠レコード(典拠ID 00567892・altLabel: Subconsciousness)
  6. 国立国会図書館サーチ 書誌詳細「潜在意識の活かし方」J.K.ウィリアムズ著, 藤井良訳. ダイヤモンド社, 1957.(書誌ID 000000960386・請求記号 145.1-cW72s-H)
  7. 広辞苑 第5版. 新村出編. 岩波書店, 1998.11.(国立国会図書館サーチ 書誌ID 000002742770・請求記号 KF3-G64)
  8. 国立国会図書館デジタルコレクション「潜在意識の活かし方」(pid 2980392・国立国会図書館内限定公開/個人送信対象)
  9. 国立国会図書館デジタルコレクション「眠りながら成功する」1968年版(pid 2980462・国立国会図書館内限定公開/個人送信対象外)
  10. 国立国会図書館サーチ 書誌詳細「サブリミナル・マインド : 潜在的人間観のゆくえ」下條信輔著. 中央公論社, 1996.(書誌ID 000002560064)
  11. 国立国会図書館サーチ 書誌詳細「自分を知り、自分を変える : 適応的無意識の心理学」ティモシー・ウィルソン著, 村田光二監訳. 新曜社, 2005.(書誌ID 000007736909)
  12. 国立国会図書館サーチ 書誌詳細「ファスト&スロー : あなたの意思はどのように決まるか? 下」ダニエル・カーネマン著, 村井章子訳. 早川書房, 2012.(書誌ID 024069308)
  13. 国立国会図書館サーチ 書誌詳細「心理学と錬金術 1」新装版. C・G・ユング著, 池田紘一, 鎌田道生訳. 人文書院, 2017.(書誌ID 028600979)
  14. 国立国会図書館サーチ 書誌詳細「自分史の書き方」立花隆著. 講談社, 2013.(書誌ID 025035583)

書誌・件名標目・分類・請求記号は、国立国会図書館サーチと Web NDL Authorities で1件ずつ開いて確かめたものです。各書の本文は開いていないので、「この本にはこう書いてある」という中身の紹介はしていません。書いてあるのは、誰がいつ出した何ページの本で、図書館がどの棚に置いたか、までです。

← 記事一覧に戻る