瞑想のやり方|臨床試験の処方は1日45分、1,427人の実測は29分

瞑想のやり方|臨床試験の処方は1日45分、1,427人の実測は29分

上の砂は、処方された45分。下に落ちたのが、実際に続いた29分。やり方は、この落ちた側から決める。
上の砂は、処方された45分。下に落ちたのが、実際に続いた29分。やり方は、この落ちた側から決める。

瞑想のやり方を調べて、本とアプリに書いてあることが違って、手が止まった人。

言われたとおり5分やってみたけれど、これで合っているのかがわからないまま、やめた人。

僕も、そこで止まりました。

先に結論を書きます。臨床試験が処方している量は、1日45分。ただし1,427人分をまとめると、実際に続いたのは1日およそ29分でした。

やり方は、処方された45分ではなく、この落ちた29分のほうから決めます。

順番に書きます。

やり方の出どころは、1982年の痛みの外来

研究の場で使われている瞑想のプログラムを、MBSRといいます。

1982対照群のない研究だと著者が書いている。慢性疼痛の患者51人2007原典の日本語版が出る。初訳は1993年2009授業の時間数と、心理的な苦痛への効果量の相関は有意ではなかった201743の試験1,427人分をまとめると、続いたのは指示の64%1982対照群のない研究だと著者が書いている。慢性疼痛の患者51人2007原典の日本語版が出る。初訳は1993年2009授業の時間数と、心理的な苦痛への効果量の相関は有意ではなかった201743の試験1,427人分をまとめると、続いたのは指示の64%
やり方の出どころ。宗教書ではなく、痛みの外来と、そのあとの検証で決まってきた。

出どころは、1982年の報告でした。対象は、それまでの医療で良くならなかった慢性疼痛の患者51人。10週間です。

対照群のない研究だと、著者自身が論文に書いています。

始まりは、ちいさいです。

ただ、そこから量を数え直した論文が積み上がりました。

原典の日本語版は2007年の『マインドフルネスストレス低減法』。387ページです。初訳は1993年で、これはその改題再刊にあたります。

手順書は、実在します。あとは、どこまで写すかだけです。

本家が処方している量

では、その本家は、いくつやれと言っているのか。

週1回2.5時間のクラスを8週間1回全日クラス7.5時間(6〜7週目)毎日自宅の練習45〜60分量は大学の医療機関の公式ページ。「週6日以上」は伊藤ら2017がカリキュラムガイドから引用した数字
MBSRが生まれた大学の医療機関が、いまも公式に案内している量。開始前に、2〜2.5時間のオリエンテーションが入る。

MBSRが生まれた大学の医療機関が、いまも公式に案内しています。

  • 週1回2.5時間のクラスを、8週間
  • 6〜7週目のどこかで、全日クラスが1回。7.5時間
  • 自宅での練習を、1日45〜60分
  • 開始前に、2〜2.5時間のオリエンテーション

2009年の論文は、この標準の形を「合計26時間の授業」と定義しています。

足すと、合いません。週2.5時間の8回で20時間。残る6時間が全日クラスの勘定で、公式ページの7.5時間とは1.5時間ずれます。

週に何日やるかは、この公式ページには書かれていません。「1日45分以上、週6日以上」のほうは、カリキュラムガイドを引用した日本の報告に載っています。

週にすると、270分。これが、処方です。

正直に書くと、多いです。ここで、たいていの人がつまずきます。

続いたのは、その64%

では、どれだけやればいいのか。

64%指示に対して続いた割合43の試験・1,427人分約29分1日あたりの実際の量週にすると174分Parsons 2017。64%の95%信頼区間は60〜69%64%指示に対して続いた割合43の試験・1,427人分約29分1日あたりの実際の量週にすると174分Parsons 2017。64%の95%信頼区間は60〜69%
45分と言われて、29分。1,427人分をならすと、そこで回っていた。

この量の問題を、2017年のレビュー論文が正式な論点に立てています。薬の量と、同じ扱いで。

数えた研究も、同じ2017年に出ています。43の試験、1,427人分をまとめたものです。

1,427人がやれたのは、指示された量の64%でした。95%の信頼区間は、60〜69%。ばらつきは、大きいです。

1日にすると、およそ29分。週にすると、174分です。

45分と言われて、29分。

ここは、失敗ではなく、続いた側の実測値です。

減らすと、割合は上がって、分数は減る

同じ研究に、続きがあります。少なめの量を最初から指示した、10の試験141人ぶんです。

標準どおりに指示1日45分・週6日割合は64%実際は週174分少なめに指示(10試験)週あたり平均180分割合は83.86%実際は週151分標準どおりに指示1日45分・週6日割合は64%実際は週174分少なめに指示(10試験)週あたり平均180分割合は83.86%実際は週151分
指示を減らすと、指示に対する割合は上がる。ただし実際にやった分数のほうは、週174分から151分へ減る(p=0.02)。

指示は、週あたり平均180分。ばらつきは±43分です。論文が例に挙げているのは、1日30分を週6日と、1日45分を週5日の2つ。

このとき、達成率は83.86%に上がりました。

ただし、こちらの95%信頼区間は67.8〜99.9%。64%の側の上限69%と重なっていて、別ものだと言い切れる幅ではないです。山の大きさも違って、64%は1,427人分、83.86%は141人分。

そして——同じ論文は、この2つを共通の物差しに載せ直して、直接くらべています。少なめに指示された側のほうが、実際にやった総量は少なかった。

週151分と、週174分。減らして渡すと、割合は上がって、分数は減ります。

差は、統計的に有意です。p=0.02。

授業のほうにも、似た話があります。

2009年の論文は、授業の時間数と、心理的な苦痛への効果量の相関が統計的に有意ではなかった、と報告しました。臨床の集団でも、そうでない集団でも、です。

ただ、これは割り付けてくらべた試験ではなく、すでに出ている研究の効果量を横に並べただけの予備的な相関だと、論文自身が書いています。証拠がいちばん積み上がっているのは標準の形だ、とも。

差が出なかったことは、短くしていい根拠にはならないです。

授業ではなく、自宅の量のほうを見ても、同じでした。

同じまとめの、28の試験898人分。自宅で練習した量と、得られた成果のあいだに、ちいさいけれど有意な関連がありました。r=0.26です。

ちいさい。でも、ある。

この関連がかかっているのは、割合ではなく、実際にやった分数のほうです。

だから、割合が上がったことを、効き目が上がったこととは読めないです。

日本で測った量と、週ごとの順番

日本でも、短くした形でやって、量を測った報告があります。2017年、15人。クラスは1回1.5時間で8週。全日クラスはなし。自宅の練習の指示は、1日30分・週6日以上です。

1〜2週目ボディスキャン3〜4週目ボディスキャンとヨーガ交互5〜6週目静坐瞑想とヨーガ交互7〜8週目資料からたどれなかった1〜2週目ボディスキャン3〜4週目ボディスキャンとヨーガ交互5〜6週目静坐瞑想とヨーガ交互7〜8週目資料からたどれなかった
週ごとの中身。これはMBSRではなく、日本で15人にやった改変版(クラス1回1.5時間・全日クラスなし)の進行。

15人のうち13人、86.7%まで最終評価ができました。ただし、これは完遂率ではないです。

「8回中6回以上出席」で数えた完遂は、15人中10人。66.7%でした。著者自身が、海外の報告(88%と79%)とくらべて「同等か低い値」と書いています。

自宅の練習は、1回33±14分・週4.6±1.6回。クラスへの出席は8回中6.1±1.4回。

1回あたりの分数は、30分と言われて33分。指示どおりです。

落ちたのは、回数のほうでした。週6日以上と言われて、4.6回。週にすると、およそ152分。ここでも、指示の84%です。

そして、僕がいちばん知りたかったことが、この報告にありました。週ごとの順番です。

  • 1〜2週目は、ボディスキャン
  • 3〜4週目は、ボディスキャンとヨーガを交互に
  • 5〜6週目は、静坐瞑想とヨーガを交互に

7〜8週目の中身は、開けた資料からはたどれませんでした。この報告が書いているのは、6週目までです。

ただし、この順番はMBSRのカリキュラムそのものではないです。同じ論文の表では、この日本のプログラムは、クラスが1.5時間で全日クラスがなく、グループ検討を講義に置き換えた別ものとして並んでいます。

大学の医療機関の公式ページのほうは、3週目に静坐瞑想が入ります。5週目ではないです。

そろっているのは、最初の2週間だけでした。どちらも、ボディスキャンから入ります。体の各部分に、順に注意を向ける練習です。

座って呼吸を数えるのは、そのあとになります。

今日の話をまとめると

本家が処方する量は、1日45分・週6日で、8週間。その量を渡された1,427人がやれたのは64%で、1日およそ29分でした。

指示を1日30分に下げる割合は84%。分数は週151分に減る処方の45分は下げない実測は1日29分。さぼりと呼ばない指示を1日30分に下げる割合は84%。分数は週151分に減る処方の45分は下げない実測は1日29分。さぼりと呼ばない
この記事の着地。処方の45分は下げないで、達成の線のほうを29分に下げる。

最初から少なめに渡すと、達成率は84%に上がります。ただし、実際にやった分数は週174分から151分へ減ります。

効き目に関連していたのは、割合ではなく、分数のほうでした。

だから、下げるのは処方のほうではなく、達成の線のほうです。45分と書いて、29分でやめた日を、さぼりと呼ばない。

今夜、3分だけ使ってください。スマホのタイマーを45分でひとつ作って、名前を「29分でも達成」にしておく。

1日13分でも8週間で差が出た研究はあります。そちらは瞑想は意味ないのかに置きました。

効き目そのものの大きさは、瞑想の科学的根拠に置きました。

この記事を書いている僕については、プロフィールにまとめてあります。

出典・参考文献

  1. UMass Memorial Health, Center for Mindfulness. Mindfulness-Based Stress Reduction (MBSR).
  2. Parsons CE, Crane C, Parsons LJ, Fjorback LO, Kuyken W. Home practice in Mindfulness-Based Cognitive Therapy and Mindfulness-Based Stress Reduction: A systematic review and meta-analysis of participants' mindfulness practice and its association with outcomes. Behaviour Research and Therapy 2017;95:29-41.
  3. Carmody J, Baer RA. How long does a mindfulness-based stress reduction program need to be? A review of class contact hours and effect sizes for psychological distress. Journal of Clinical Psychology 2009;65(6):627-638.
  4. 伊藤靖, 山本和美, 神原憲治. Mindfulness Based Stress Reduction(MBSR)で用いられるマインドフルネス瞑想法の本邦における実施可能性および効果. 心身医学 2017;57(11):1133-1142.
  5. Kabat-Zinn J. An outpatient program in behavioral medicine for chronic pain patients based on the practice of mindfulness meditation: theoretical considerations and preliminary results. General Hospital Psychiatry 1982;4(1):33-47.
  6. J.カバットジン 著/春木豊 訳『マインドフルネスストレス低減法』北大路書房, 2007年9月, 387p.(原題 Full catastrophe living・1993年刊『生命力がよみがえる瞑想健康法』の改題・国立国会図書館サーチ 書誌データ)
  7. Creswell JD. Mindfulness Interventions. Annual Review of Psychology 2017;68:491-516.

瞑想をすすめるためにも、止めるためにも集めていません。処方された量と、実際に続いた量を、同じ基準で並べました。MBSRの公式カリキュラムガイドのPDFは、どの経路からも開けませんでした。伊藤ら2017の表1はそのガイドを引用していますが、週ごとの中身を載せた図1のほうは、同じ論文の日本版プログラム(クラス1回1.5時間・全日クラスなし)の進行です。大学の医療機関の公式ページの週ごとの中身とは、3週目から食い違います。7〜8週目に何をやるかは、開けた資料からはたどれませんでした。

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