アファメーションの科学的根拠|58件のメタ分析と、9年後まで残った数字

アファメーションの科学的根拠|58件のメタ分析と、9年後まで残った数字

紙に書いた価値は、脅かされている人にだけ届く。その効き目は、7〜9年後の進学率にまで残っていた。
紙に書いた価値は、脅かされている人にだけ届く。その効き目は、7〜9年後の進学率にまで残っていた。

大事にしていることを紙に書いてみた。三日で、やめた。

科学的根拠を調べたら、効くという報告と、効かないという報告が、両方出てきます。

僕も、そのどちらも読みました。

どちらも、うそではないです。

先に結論を書きます。自分の価値について書く型は、平均するとほとんど効きません。効いているのは、いま脅かされている人だけです。

ここで言う「脅かされている人」は、その場で自分の力をうたがわれている人です。成績で出身をうたがわれる生徒。運動不足を指摘される人。

どちらも、そういう場面にいます。

ここで言う「自分の価値について書く型」は、「自分にはできる」と唱える型とは別物です。実験で参加者に書かせるのは、大事にしている価値についての作文のほうです。

唱える型と書く型の違いは、アファメーションは効果ないのかに書きました。ここで見るのは、書く型が誰に効いて、どこまで残ったのかです。

順番に書きます。

58件を集めると、効き目はふたつに割れた

2021年に、教室でやった「自分の価値について書く型」を集めたメタ分析が出ています。

g = .15脅かされている生徒小さいが、効いている側g = .01脅かされていない生徒ほぼゼロ出典: 2021年のメタ分析・58件(学力への効果量)g = .15脅かされている生徒小さいが、効いている側g = .01脅かされていない生徒ほぼゼロ出典: 2021年のメタ分析・58件(学力への効果量)
同じ介入でも、相手で割ると効き目が分かれる。平均を見ているかぎり、この差は消える。

系統的に集めた研究は、58件です。

学力への効き目は、相手で割れました。

脅かされている生徒で、効果量が g = .15。脅かされていない生徒で、g = .01。

.01 は、ほぼゼロです。

平均だけを見ているかぎり、この介入は「効かない」に見えます。

データを相手で割って、はじめて効いている側が出てきます。

ここが、わかれめです。

年に何回かの15分の作文が、7〜9年後の進学率を動かした

2017年に、中学での介入を7〜9年おいかけた報告が出ています。

作文・大学進学92%対照・大学進学78%作文・4年制67%対照・4年制47%出典: 2017年の追跡・アフリカ系アメリカ人の生徒158人
北東部の学区の339人のうち、アフリカ系アメリカ人の生徒158人。15分の作文で、7〜9年後の進学率が分かれていた。

北東部の学区で作文をした生徒たちを、大学まで追いかけたものです。

やったのは、自分の価値について書く型です。1回15分。年度のはじめとテストの前に、何回か書く。

追ったのは339人。うち、アフリカ系アメリカ人の生徒が158人、白人の生徒が181人です。

ながい追跡です。

アフリカ系アメリカ人の生徒が大学へ進んだわりあいは、対照群で78%。作文をした群で92%です。

4年制にしぼると、対照群で47%、作文をした群で67%。

ちいさくないひらきです。

白人の生徒では、大学へ進んだわりあいが対照群で86%、作文をした群で80%。差は出ていません。

そこは、動きません。

紙に書いた人みんなに効いた、という話ではないんですよね。

2年後には、入るクラスそのものが変わっていた

おなじ2017年の報告の、別の学区です。185人で、ラテン系の生徒が81人、白人の生徒が104人。

対照群(ラテン系)補習クラスに入る 73%進学準備の選択科目に登録 8%2年後に地区の普通高校 50%作文をした群(ラテン系)補習クラスに入る 38%進学準備の選択科目に登録 44%2年後に地区の普通高校 89%対照群(ラテン系)補習クラスに入る 73%進学準備の選択科目に登録 8%2年後に地区の普通高校 50%作文をした群(ラテン系)補習クラスに入る 38%進学準備の選択科目に登録 44%2年後に地区の普通高校 89%
点数だけではなく、2年後に入っている場所が変わっていた。白人の生徒では、補習クラスでも普通高校でも差が出ていない。

ラテン系の生徒で、補習クラスに入るわりあいは、対照群で73%。作文をした群で38%です。

大学進学の準備になる選択科目をとったわりあいは、対照群で8%、作文をした群で44%。

2年後に地区の普通高校にいたわりあいは、対照群で50%、作文をした群で89%。

1.8ばいです。

白人の生徒では、補習クラスでも普通高校でも、差は出ていません。

白人は、動きません。

点数だけの話ではないです。入る場所のほうが、先に変わっていました。

この学区の実験を報告した2013年の元論文でも、成績が上がったのはラテン系の生徒だけでした。その効果は3年つづきました。

これは、別の実験ではないです。同じ学区の、同じ生徒たちの話です。

効くには、3つがそろっている必要がある

では、いつ効くのか。

脅威いま、脅かされている場面がある手立て変わるための手立てが、手元にある時期その脅威と手立てに、時期が合っている出典: 2019年の総説とメタ分析(3つは重なると大きくなる)
3つのうち1つでも欠けると、効き目は落ちる。重なったときだけ、大きくなる。

2019年の総説とメタ分析が、条件を3つに整理しています。

脅かされていること。変わるための手立てが、手元にあること。そのふたつに対して、時期が合っていること。

3つとも、場面の話です。

脅威だけでも、手立てだけでも、時期が合っていれば効き目は大きくなりました。ふたつ重なると、さらに大きくなります。

58件のメタ分析も、おなじところを指しています。効き目が大きかったのは、特別なイベントではなく、ふつうの授業の課題として作文を出したときでした。

2018年に出た920人の報告では、学力差の広がりが、高校へ上がるときに半分に抑えられています。学区ぜんぶへ最初に広げたときの生徒を、高校まで追ったものです。

効き目は、学校のようすと、生徒の取り組み方で変わりました。

ただし、同じ学区で同じ手順をやり直した2017年の追試では、効き目が出ていません。あったとしても効果量0.10より小さい、というところまで絞れています。

920人の追跡と、この追試は、別の生徒たちです。

介入を学区ぜんぶに広げると、結果がそろわなくなります。

効き目は、もろいです。

日本の103人でも、効いたのは片側だけだった

日本でも、実験があります。

運動量の少ない人書いた群のほうが意図が強いメッセージに脅かされている側効いた運動量の多い人書いても意図は変わらない脅かされていない側効かない運動量の少ない人書いた群のほうが意図が強いメッセージに脅かされている側効いた運動量の多い人書いても意図は変わらない脅かされていない側効かない
日本人の大学生103人。同じメッセージ、同じ作文でも、動いたのは運動量の少ない側だけだった。

2021年、日本人の大学生103人。

少ない人数です。

健康のリスクを伝えるメッセージの前に、自分の価値を書いてもらった実験です。

ふだんの運動量は、スマホのアプリで測っています。

運動量の少ない人では、書いた群のほうが「運動を増やそう」という意図が強くなりました。

運動量の多い人では、効き目が出ていません。

多い側は、動きません。

運動量の少ない人は、そのメッセージに脅かされている側です。

健康メッセージだけに絞った、別の2015年のメタ分析(16件)も、平均は小さいままです。意図の効果量が d+ = .26、行動の効果量が d+ = .27。

どちらも、小さいプラスです。

ただし、意図が大きく動いた研究ほど行動も大きく動く、という関係はありませんでした。β = .03 です。

日本の実験とおなじ2021年に出た、実験3件の報告でも、効いたのは「病気を防ぎたい」という構えが強い人だけでした。d = .20。

その構えが強い人は、危険を伝えるメッセージを自分ごととして受け取りやすい側です。論文が言うのは、そこまでです。

効いたのは、いつも片側でした。

今日の話をまとめると

アファメーションの科学的根拠は、「ある・ない」の形では出てきません。

動かない場面調子のいい日に、きれいな言葉を書く。脅かされていない側は g = .01。ほぼ動かない動く場面いま脅かされていて、変わるための手立てが手元にあり、時期が合っている。7〜9年後まで残る動かない場面調子のいい日に、きれいな言葉を書く。脅かされていない側は g = .01。ほぼ動かない動く場面いま脅かされていて、変わるための手立てが手元にあり、時期が合っている。7〜9年後まで残る
この記事の着地。効き目を決めているのは、書いた言葉ではなく、書いた人が置かれている場面。

割れているのは、相手のほうです。

58件を集めると、脅かされている生徒で g = .15、脅かされていない生徒で g = .01。平均で見ると——消えます。

北東部の学区のアフリカ系アメリカ人の生徒では、7〜9年後に大学へ進んだわりあいが、対照群78%に対して92%。

別の学区のラテン系の生徒では、2年後に補習クラスへ入るわりあいが、対照群73%に対して38%でした。

日本の103人でも、効いたのは運動量の少ない側だけです。

効き目を決めているのは、うまく書けたかどうかではなく、書いたときの場面のほう。

だから、調子のいい日に書いても、何も変わらないまま終わります。

場面のほうが、先です。

今夜、3分だけ使ってください。あした緊張する予定をひとつ選んで、その直前に、大事にしている価値をひとつ書くと決める。

瞑想にも、同じ問い方ができます。科学的根拠は、瞑想に科学的根拠はあるのかにあります。

誰が書いているのかは、プロフィールにまとめてあります。

出典・参考文献

  1. Wu Z, Spreckelsen TF, Cohen GL. A meta-analysis of the effect of values affirmation on academic achievement. Journal of Social Issues 2021;77(3):702-750.
  2. Goyer JP, Garcia J, Purdie-Vaughns V, et al. Self-affirmation facilitates minority middle schoolers' progress along college trajectories. PNAS 2017;114(29):7594-7599.
  3. Sherman DK, Hartson KA, Binning KR, et al. Deflecting the trajectory and changing the narrative: how self-affirmation affects academic performance and motivation under identity threat. J Pers Soc Psychol 2013;104(4):591-618.
  4. Hanselman P, Rozek CS, Grigg J, Borman GD. New evidence on self-affirmation effects and theorized sources of heterogeneity from large-scale replications. J Educ Psychol 2017;109(3):405-424.
  5. Borman GD, Grigg J, Rozek CS, Hanselman P, Dewey NA. Self-affirmation effects are produced by school context, student engagement with the intervention, and time. Psychol Sci 2018;29(11):1773-1784.
  6. Ferrer RA, Cohen GL. Reconceptualizing self-affirmation with the trigger and channel framework: lessons from the health domain. Pers Soc Psychol Rev 2019;23(3):285-304.
  7. Shimoda M, Shimoda S. Self-affirmation enhances the intention to improve physical inactivity through health risk messages. 実験社会心理学研究 2021;61(1):28-33.
  8. Sweeney AM, Moyer A. Self-affirmation and responses to health messages: a meta-analysis on intentions and behavior. Health Psychol 2015;34(2):149-159.
  9. Ferrer RA, Cerully JL, Harris PR, Klein WMP. Greater benefit of self-affirmation for prevention-focused individuals prior to threatening health messages. Psychol Health 2021;36(6):719-738.

数字は、一次資料の要旨と本文を開いて確かめたものだけを書いています。

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