直感を鍛えるには|答えが返る日を先に置く手順と、答え合わせの3分の1超が逆効果だった話

直感を鍛えるには|答えが返る日を先に置く手順と、答え合わせの3分の1超が逆効果だった話

直感は、答えが返ってくる場所でしか育たない。答え合わせは、入れ方しだいで逆にも働く。
直感は、答えが返ってくる場所でしか育たない。答え合わせは、入れ方しだいで逆にも働く。

「この人となら組める」と思って進めた話で、あとから大きく外れました。

逆に、わけは言えないのに気が進まなかった話は、やめておいて正解でした。

僕は、どちらもあります。

先に結論を書きます。直感が鍛えられるのは、決めたことの答えが自分に返ってくる場所だけです。

感度の話ではないんですよね。

腕でもないです。

直感が当たるかどうかは、環境の側の性質が先に効きます。

そして、その環境は自分で組み直せます。ただし、答えが返る日まで決めないと、答え合わせは逆にも働きます。

順番に書きます。

直感が育つのは、答えが返ってくる場所だけ

推論には、2つの場面があります。

意地悪な学習環境学ぶ場面と使う場面で、手に入る情報がずれている親切な学習環境2つの場面の情報が近くそろっている。正しい推論が成り立つための必要条件意地悪な学習環境学ぶ場面と使う場面で、手に入る情報がずれている親切な学習環境2つの場面の情報が近くそろっている。正しい推論が成り立つための必要条件
2015年の論文が引いた線。学ぶ場面と使う場面がそろっているかどうかで、環境は2つに分かれる。

情報を学ぶ場面と、それを使う場面です。

2015年の論文が、この2つの関係で環境を分けました。

学ぶ場面と使う場面で、手に入る情報が近くそろっている環境を kind(親切な)学習環境。ずれている環境を wicked(意地悪な)学習環境と呼びます。

ここから先は、親切な環境と書きます。

そして親切な環境であることは、正しい推論が成り立つための必要条件だ、と書かれています。

当たるかどうかは、腕より先に、環境がどちらかで決まるということです。

ただし、親切な環境にいれば外れない、という話ではありません。

論文は、そのあとをこう書いています。条件がそろっているぶん、外れたら、こんどは人の側に返ってくる、と。

ここが、分かれ目です。

直感を信じてよい条件が2つある、という話は直観と直感の違いに書きました。

あの2つは、その人の感度の目盛りではありません。

ひとつは、環境の規則性。

もうひとつは、その規則性を学べる機会があったかどうかです。

あちらでやったのは、決めたことを書き留めること。ここでやるのは、答えが返る日を先に置くことです。

だから、鍛える側から見ると、話がひっくり返ります。

感度を上げるのではなく、自分のいる場所を親切な環境に寄せる。

腕の前に、場所の話です。

天気予報が上達できるのは、翌日に答えが出るから

親切な環境の実物が、天気予報です。

明日の予報85%3日目80%5日目76%7日目72%出典: 気象庁 降水の有無の適中率・全国平均(2016〜2025年)
答えが翌日に出る領域では、当たりやすさが実測できる。先の予報になるほど落ちていく。

気象庁が、降水の有無の適中率を公表しています。

2016〜2025年の10年平均で見ると、明日の予報が85%。明後日が83%、3日目が80%、5日目が76%、7日目が72%。これは全国平均です。

先の予報になるほど、適中率は落ちます。

同じ気象庁が、ひとつ前の10年(2015〜2024年)で、地方と季節の内訳も出しています。

明日の予報の適中率は、地方別の年平均で81〜87%です。

季節で見ると、夏がいちばん低い。夕立のように狭いところで起きる降水が多いから、と書かれています。

いちばん低いのは冬の北海道で、75%。こちらは、北海道の雪が予報の対象の全体ではなく、部分的に降るからだと書かれています。

どちらも、予報する人の腕の話ではないんですよね。

対象の側の事情です。

当たりやすさは、対象の側の規則性で動く。

予報が上達できる理由は、ひとつです。

翌日には、答えが出る。

毎日、返ってきます。

だから、予報する人は上手くなれます。

仕事の時間は、そのままでは練習にならない

経験を積めば、直感が鍛えられる。

3時間の試合打者が見る球は5〜15球うち特定の弱点にかかわるのは1〜2球3時間の練習専属の投手をつける打つ機会は数百回弱点を組織的に探せる3時間の試合打者が見る球は5〜15球うち特定の弱点にかかわるのは1〜2球3時間の練習専属の投手をつける打つ機会は数百回弱点を組織的に探せる
1993年の論文が挙げた野球の例。同じ3時間でも、返ってくる回数がまるで違う。

ここが、いちばん危ないところです。

1993年の論文が、練習が練習として成り立つ条件を挙げています。そのひとつが、やったことについて、その場ですぐ返る中身のあるフィードバックを受け取ること。

同じ論文が、野球のたとえを出しています。

3時間の試合で、打者が見る球は5〜15球。そのうち、ある特定の弱点にかかわるのは1〜2球です。

同じ3時間——専属の投手をつけた練習に使うと、打つ機会は数百回になります。弱点を、組織的に探せます。

3時間の本番と、3時間の練習は、同じ3時間ではありません。

仕事も、同じです。

1年やったから1年ぶんの答え合わせがある、とはならない。

増えるのは、年数だけ。

答え合わせの回数は、増えません。

答え合わせは、自分で組み直せる

同じ2015年の論文に、もうひとつ書いてあります。

1992うまく判断できるかどうかは、人ではなく課題の性質で決まる、という論点が立つ2001直感の教育を主題にした本『Educating Intuition』が出る2015親切なほうへ組み立て直すと、確率の判断がよくなると報告される1992うまく判断できるかどうかは、人ではなく課題の性質で決まる、という論点が立つ2001直感の教育を主題にした本『Educating Intuition』が出る2015親切なほうへ組み立て直すと、確率の判断がよくなると報告される
環境の側を見る論点と、組み立て直せるという報告。直接つながる系譜ではない。

学習環境を親切なほうへ組み立て直すと、確率の判断がよくなる。

作り直せます。

環境は、配られたまま使うものではないんですよね。

環境は、いじれます。

筆頭の著者(ホガース)は、直感の教育をテーマにした本も出しています。2001年、シカゴ大学出版局の『Educating Intuition』です。

似た向きの論点は、もっと前にもありました。専門家がうまく判断できるかどうかは、人ではなく課題の性質で決まる。1992年の論文です。

ただ、こちらは書誌までしか開けませんでした。

中身は、書きません。

組み直すときに、僕がまず決めるのは、ひとつです。

答えが返る日です。

入れ方を決めないと、逆に下がる

では、答え合わせは多いほどいいのか。

d=.41平均の効果607の効果量・23,663の観測3分の1超成績が下がった介入標本の誤差では説明がつかない出典: Kluger & DeNisi 1996 のメタ分析d=.41平均の効果607の効果量・23,663の観測3分の1超成績が下がった介入標本の誤差では説明がつかない出典: Kluger & DeNisi1996 のメタ分析
1996年のメタ分析。平均では上がっているのに、介入の3分の1超では下がっていた。

そこは、違います。

1996年のメタ分析があります。607の効果量、23,663の観測をまとめたものです。

平均の効果は d=.41。

全体としては、成績が上がっています。

ただし入れたフィードバック介入のうち、3分の1を超えるもので、成績は下がっていました。

これは、割合の話です。

3分の1より多く入れると下がる、という線ではありません。

標本の誤差では説明がつかない、と論文に書かれています。ほめたか、けなしたかの違いでもない。

2007年の総説も、同じ向きです。フィードバックは学習と達成にもっとも強く効く要因のひとつだが、その影響はプラスにもマイナスにもなる。種類と与え方で、効き方が変わる、と。

論文が答えを出したのは、ここまでです。

だから、足すか足さないかの話ではありません。与え方の話です。

そのうえで僕がまず決めるのは、答えが返る日です。

根拠は、ここまでに出した2つです。1993年の論文は「その場ですぐ返ること」を練習の条件に挙げていました。天気予報が上達したのも、返る日が翌日に決まっていたからです。

今日の話をまとめると

直感を鍛えることは、感度を上げることではありません。

今夜3日のうちに答えが出る判断をひとつ選ぶいま答えが出る日付をカレンダーに書くその日答えが自分に返ってくる今夜3日のうちに答えが出る判断をひとつ選ぶいま答えが出る日付をカレンダーに書くその日答えが自分に返ってくる
この記事の着地。答えが返る日を、先に置いておく。

答えが返ってくる場所を、自分の手で作ることです。

場所は、作れます。

天気予報が上達できたのは、翌日に答えが出るからでした。

3時間の試合が練習にならないのも、答えが5〜15球ぶんしか返らないからです。

答え合わせを足すだけで伸びないのも、返る日を決めていないからでした。

同じ話です。

日付を先に置いたかどうかが、境目です。

今夜、3分だけ使ってください。明日から3日のうちに答えが出る判断をひとつ選んで、その日付を、いまカレンダーに書く。

判断の中身は、まだ書かなくていいです。

日付だけです。

それだけで、答えは自分に返ってきます。

伸びる練習の型は、能力開発とはに書きました。

書いている人のことは、プロフィールにまとめてあります。

出典・参考文献

  1. Hogarth RM, Lejarraga T, Soyer E. The Two Settings of Kind and Wicked Learning Environments. Current Directions in Psychological Science 2015;24(5):379-385.
  2. Hogarth RM. Educating Intuition. Chicago: University of Chicago Press, 2001. ISBN 0226348601.(Internet Archive の所蔵レコードで書誌を確認)
  3. Shanteau J. Competence in experts: The role of task characteristics. Organizational Behavior and Human Decision Processes 1992;53(2):252-266.(CrossRef の登録レコードで書誌のみ確認)
  4. Ericsson KA, Krampe RT, Tesch-Römer C. The role of deliberate practice in the acquisition of expert performance. Psychological Review 1993;100(3):363-406.
  5. Kluger AN, DeNisi A. The effects of feedback interventions on performance: A historical review, a meta-analysis, and a preliminary feedback intervention theory. Psychological Bulletin 1996;119(2):254-284.
  6. Hattie J, Timperley H. The Power of Feedback. Review of Educational Research 2007;77(1):81-112.
  7. 気象庁「降水の有無の適中率の例年値」(天気予報の精度検証結果)
  8. 気象庁「天気予報の精度の例年値とその特徴」

数字は、論文の本文か、公表元のページを開いて確かめたものだけを書きました。Shanteau 1992 は書誌と論点までしか開けていないので、中身は書いていません。Hattie & Timperley 2007 も、本文を開けなかったぶんは定性的な結論だけにとどめています。

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