「この人となら組める」と思って進めた話で、あとから大きく外れました。
逆に、わけは言えないのに気が進まなかった話は、やめておいて正解でした。
僕は、どちらもあります。
先に結論を書きます。直感が鍛えられるのは、決めたことの答えが自分に返ってくる場所だけです。
感度の話ではないんですよね。
腕でもないです。
直感が当たるかどうかは、環境の側の性質が先に効きます。
そして、その環境は自分で組み直せます。ただし、答えが返る日まで決めないと、答え合わせは逆にも働きます。
順番に書きます。
直感が育つのは、答えが返ってくる場所だけ
推論には、2つの場面があります。
情報を学ぶ場面と、それを使う場面です。
2015年の論文が、この2つの関係で環境を分けました。
学ぶ場面と使う場面で、手に入る情報が近くそろっている環境を kind(親切な)学習環境。ずれている環境を wicked(意地悪な)学習環境と呼びます。
ここから先は、親切な環境と書きます。
そして親切な環境であることは、正しい推論が成り立つための必要条件だ、と書かれています。
当たるかどうかは、腕より先に、環境がどちらかで決まるということです。
ただし、親切な環境にいれば外れない、という話ではありません。
論文は、そのあとをこう書いています。条件がそろっているぶん、外れたら、こんどは人の側に返ってくる、と。
ここが、分かれ目です。
直感を信じてよい条件が2つある、という話は直観と直感の違いに書きました。
あの2つは、その人の感度の目盛りではありません。
ひとつは、環境の規則性。
もうひとつは、その規則性を学べる機会があったかどうかです。
あちらでやったのは、決めたことを書き留めること。ここでやるのは、答えが返る日を先に置くことです。
だから、鍛える側から見ると、話がひっくり返ります。
感度を上げるのではなく、自分のいる場所を親切な環境に寄せる。
腕の前に、場所の話です。
天気予報が上達できるのは、翌日に答えが出るから
親切な環境の実物が、天気予報です。
気象庁が、降水の有無の適中率を公表しています。
2016〜2025年の10年平均で見ると、明日の予報が85%。明後日が83%、3日目が80%、5日目が76%、7日目が72%。これは全国平均です。
先の予報になるほど、適中率は落ちます。
同じ気象庁が、ひとつ前の10年(2015〜2024年)で、地方と季節の内訳も出しています。
明日の予報の適中率は、地方別の年平均で81〜87%です。
季節で見ると、夏がいちばん低い。夕立のように狭いところで起きる降水が多いから、と書かれています。
いちばん低いのは冬の北海道で、75%。こちらは、北海道の雪が予報の対象の全体ではなく、部分的に降るからだと書かれています。
どちらも、予報する人の腕の話ではないんですよね。
対象の側の事情です。
当たりやすさは、対象の側の規則性で動く。
予報が上達できる理由は、ひとつです。
翌日には、答えが出る。
毎日、返ってきます。
だから、予報する人は上手くなれます。
仕事の時間は、そのままでは練習にならない
経験を積めば、直感が鍛えられる。
ここが、いちばん危ないところです。
1993年の論文が、練習が練習として成り立つ条件を挙げています。そのひとつが、やったことについて、その場ですぐ返る中身のあるフィードバックを受け取ること。
同じ論文が、野球のたとえを出しています。
3時間の試合で、打者が見る球は5〜15球。そのうち、ある特定の弱点にかかわるのは1〜2球です。
同じ3時間——専属の投手をつけた練習に使うと、打つ機会は数百回になります。弱点を、組織的に探せます。
3時間の本番と、3時間の練習は、同じ3時間ではありません。
仕事も、同じです。
1年やったから1年ぶんの答え合わせがある、とはならない。
増えるのは、年数だけ。
答え合わせの回数は、増えません。
答え合わせは、自分で組み直せる
同じ2015年の論文に、もうひとつ書いてあります。
学習環境を親切なほうへ組み立て直すと、確率の判断がよくなる。
作り直せます。
環境は、配られたまま使うものではないんですよね。
環境は、いじれます。
筆頭の著者(ホガース)は、直感の教育をテーマにした本も出しています。2001年、シカゴ大学出版局の『Educating Intuition』です。
似た向きの論点は、もっと前にもありました。専門家がうまく判断できるかどうかは、人ではなく課題の性質で決まる。1992年の論文です。
ただ、こちらは書誌までしか開けませんでした。
中身は、書きません。
組み直すときに、僕がまず決めるのは、ひとつです。
答えが返る日です。
入れ方を決めないと、逆に下がる
では、答え合わせは多いほどいいのか。
そこは、違います。
1996年のメタ分析があります。607の効果量、23,663の観測をまとめたものです。
平均の効果は d=.41。
全体としては、成績が上がっています。
ただし入れたフィードバック介入のうち、3分の1を超えるもので、成績は下がっていました。
これは、割合の話です。
3分の1より多く入れると下がる、という線ではありません。
標本の誤差では説明がつかない、と論文に書かれています。ほめたか、けなしたかの違いでもない。
2007年の総説も、同じ向きです。フィードバックは学習と達成にもっとも強く効く要因のひとつだが、その影響はプラスにもマイナスにもなる。種類と与え方で、効き方が変わる、と。
論文が答えを出したのは、ここまでです。
だから、足すか足さないかの話ではありません。与え方の話です。
そのうえで僕がまず決めるのは、答えが返る日です。
根拠は、ここまでに出した2つです。1993年の論文は「その場ですぐ返ること」を練習の条件に挙げていました。天気予報が上達したのも、返る日が翌日に決まっていたからです。
今日の話をまとめると
直感を鍛えることは、感度を上げることではありません。
答えが返ってくる場所を、自分の手で作ることです。
場所は、作れます。
天気予報が上達できたのは、翌日に答えが出るからでした。
3時間の試合が練習にならないのも、答えが5〜15球ぶんしか返らないからです。
答え合わせを足すだけで伸びないのも、返る日を決めていないからでした。
同じ話です。
日付を先に置いたかどうかが、境目です。
今夜、3分だけ使ってください。明日から3日のうちに答えが出る判断をひとつ選んで、その日付を、いまカレンダーに書く。
判断の中身は、まだ書かなくていいです。
日付だけです。
それだけで、答えは自分に返ってきます。
伸びる練習の型は、能力開発とはに書きました。
書いている人のことは、プロフィールにまとめてあります。





