引き寄せの法則のノートは効くのか|願いの中身ではなく、書き方を測った実測

引き寄せの法則のノートは効くのか|願いの中身ではなく、書き方を測った実測

ノートに書く願いの中身に、測定はない。測られていたのは、紙に何をどう書くか、のほうだった。
ノートに書く願いの中身に、測定はない。測られていたのは、紙に何をどう書くか、のほうだった。

願いを書くノートを買って、3ページで止まっている人。

書いたのに何も起きなくて、そのまま、引き出しに入れた人。

僕は、どちらもやりました。

先に結論を書きます。引き寄せノートは、願いを叶える装置ではなく、頭を空ける装置として測られています。

ノートに書く「願いの中身」を測った研究は、見つかりませんでした。

よく引かれる2つも、願いの中身は測っていません。

1953年のイェール大学の卒業生調査は、そんな調査があった形跡が確認されていません。

もう1つは査読論文ではなく、2007年の学会発表です。最後まで終えたのは、149人。よく回る「43%が76%に」は、その資料に載っていません。

見つかったのは、紙に何をどう書くかを測った研究のほうです。

順番に書きます。

4夜書いた46人の、半年後

1986年の実験です。

感情だけを書いた+1.25回事実だけを書いた+1.18回あたり障りのない話題+1.00回事実と感情の両方±0.00回出典: Pennebaker & Beall 1986(実験前3か月と実験後6か月の受診回数の差・p=.055)
4群とも書いた。半年後の受診回数が動かなかったのは、事実と感情の両方を書いた群だけだった。

健康な大学生46人が、4夜つづけて毎晩15分、何かを書きました。

つらかったできごとの事実だけを書く人。感情だけを書く人。両方を書く人。あたり障りのない話題を書く人。

4つの群とも、書いています。ちがうのは、書いた中身だけです。

事実と感情の両方を書いた群は、初日の直後に血圧が大きく上がりました。感情を書いた群は、気分も下がっています。

先に、悪くなる。

変わったのは、そのあとでした。

学生保健センターへの受診回数は、実験前の約3か月(8月末から11月中旬)と、実験後の半年(11月中旬から5月中旬)を比べています。

後ろの期間のほうが長いので、どの群もふえやすい数え方です。

あたり障りのない話題を書いた群は、1.00回ふえた。感情だけを書いた群は1.25回。事実だけを書いた群は1.18回。

事実と感情の両方を書いた群だけが、±0.00でした。

そこだけが、動かない。

ただし、この差は p=.055。有意の線には、届いていません。

研究者自身も「人数はかなり少ない」「いくつかの測定は、ぎりぎり有意に届かなかった」と書き添え、追試が要ると結んでいます。

この実験が測ったのは、書いたかどうかではありません。

何を書いたか、のほうです。

書き出した時点で、頭から消える

やり残したことは、頭に居座ります。

抱えたまま関係のない読書やアナグラムの最中に割り込む。目標に関わる言葉が浮かびやすくなるいつ・どこで・どうやるかを書く割り込みが消える。達成していなくても消える。書いた時刻に、また戻ってくる抱えたまま関係のない読書やアナグラムの最中に割り込む。目標に関わる言葉が浮かびやすくなるいつ・どこで・どうやるかを書く割り込みが消える。達成していなくても消える。書いた時刻に、また戻ってくる
消えた条件は「達成した」ではなく「書いた」。書いた時点で、割り込みは止まっている。

関係のない作業をしているあいだに、割り込んでくる。

2011年の論文が、それを3つの形から測っています。

読書課題への割り込み。言葉の浮かびやすさ。アナグラム課題の成績の落ち方。

そのあと、「いつ・どこで・どうやるか」を書かせました。

割り込みは、消えました。

きれいに、消えた。

だいじなのは、消えた条件のほうです。

達成したから消えたのではありません——計画を書いた、その時点で消えています。

順番が、逆に見えます。

研究者はこう書いています。計画ができた時点で目標へ向かう力は止まり、書いた時刻に再開される、と。

つまりノートは、願いを引き寄せる装置ではない。

頭に居座っているものを、外に出して置いておく装置です。

紙に書くか、画面に書くかで、脳の動きが変わる

2021年の日本の研究です。

紙の手帳書き留めるのに使った時間が短い易しい問題の正答率がタブレットより高い思い出す間の脳の活動が高いタブレット・スマホ書き留めに時間がかかる全体の正答率は3群で差がないタブレットはペン、スマホはフリックかキーボード紙の手帳書き留めるのに使った時間が短い易しい問題の正答率がタブレットより高い思い出す間の脳の活動が高いタブレット・スマホ書き留めに時間がかかる全体の正答率は3群で差がないタブレットはペン、スマホはフリックかキーボード
手帳もタブレットもペンで手書き。それでも差が出たのは、紙かどうかのほうだった。

18歳から29歳の48人を、紙の手帳・タブレット・スマホの3つの群に分け、同じ予定を書き留めてもらいました。

手帳とタブレットは、どちらもペンで手書き。スマホの群だけが、フリック入力か画面のキーボードで打ちました。

手帳の群は、書き留めるのに使った時間が短い。

それでも1時間後の正答率は、全体では3つの群で差がありません。易しい問題だけ、手帳の群がタブレットの群より高く出ています。

はやくて、落ちない。

そして手帳の群は、思い出しているあいだの海馬・楔前部・言葉に関わるところの活動が、ほかの2つの群より高かった。

手帳もタブレットも、ペンです。

だから差は、「手書きかどうか」ではありません。紙かどうか、のほうに出ています。

ただし、これは思い出すときの話です。頭が空くかどうかは、測られていません。

効果そのものは、小さい

効いたと出た側だけでは、片手落ちになります。

r=.075146本をまとめた平均効果量つらいできごとを書かせる実験だけの平均週1.5時間運動していた時間の差感謝を週1回・10回ぶん書き出した群別々の介入の数字(左=開示的筆記 Frattaroli 2006 /右=感謝日記 Emmons 2003)r=.075146本をまとめた平均効果量つらいできごとを書かせる実験だけの平均週1.5時間運動していた時間の差感謝を週1回・10回ぶん書き出した群別々の介入の数字(左=開示的筆記Frattaroli 2006 /右=感謝日記 Emmons 2003)
書くことの効果は、確かにプラス。ただし平均は小さい。それでも行動の側には出ている。

2006年に、無作為に割りつけた146本をまとめた分析が出ています。

書くことの効果は、プラスで、有意でした。

ただし、平均の効果量は r=.075 です。小さい。

これが、期待していい大きさのめやすです。ノートを開いたら人生が入れ替わる、という大きさではない。

ここは、正直に置きます。

この146本は、つらいできごとを書かせる実験だけを集めたものです。ほかの実測は、ここに入っていません。

それでも、行動の側には出ます。

2003年の研究では、感謝していることを最大5つ、週に1回、10回ぶん書き出させました。

書いた群は、不満を書いた群より、運動していた時間が週あたり1.5時間ほど多かった。

同じ論文の3つめの研究では、神経筋疾患のある65人(22歳から77歳)が21日つづけて書いています。人生全体の満足は7段階で5.54、対照群は4.80。

小さい効果でも、行動と気分の側には出る。

いちばん有名な1本は、追試で再現しなかった

いちばん引かれるのが、2011年のもう1本です。

元の論文が報告した数字何もしない群は正答率が12%下がる10分書いた群は5%上がる不安の強い生徒は期末で6%高い不安の弱い生徒には差が出ていないそのあとの追試2018年の計画で、2回とも効果が出なかった効果量は、わずかに逆向き2021年の教室173人でも再現せず元の論文が報告した数字何もしない群は正答率が12%下がる10分書いた群は5%上がる不安の強い生徒は期末で6%高い不安の弱い生徒には差が出ていないそのあとの追試2018年の計画で、2回とも効果が出なかった効果量は、わずかに逆向き2021年の教室173人でも再現せず
元の論文が報告した数字と、そのあとの追試で出た結果。引かれた回数と、確かめられた度合いは別のもの。

試験の直前に10分だけ、不安を書き出させる。

実験室では、プレッシャーの高い場面で、何もしなかった群の正答率が12%下がり、10分書いた群は5%上がりました。

教室でも出ています。試験の不安が強い生徒では、書いた群が期末試験で6%高い。

試験の不安が弱い生徒には、差が出ていません。

その後、この1本は追試にかけられます。ネイチャーとサイエンスの実験21本を、あらためて追試する2018年の計画です。

追試は2回とも、効果が出ませんでした。効果量は、わずかに逆向きでした。

2021年には、大学の教室で173人の追試も出ています。書いた群は73%、対照群は74%。

差は、ありません。

引かれた回数と、確かめられた度合いは、別のものです。

今日の話をまとめると

願いの中身を測った研究は、見つかりませんでした。

叶える装置として使う願いの中身を書き続ける。その中身を測った研究は、見つからない頭を空ける装置として使う居座っていることを、日付と場所と最初の動作の形で紙に出して、閉じる叶える装置として使う願いの中身を書き続ける。その中身を測った研究は、見つからない頭を空ける装置として使う居座っていることを、日付と場所と最初の動作の形で紙に出して、閉じる
この記事の着地。ノートは、願いを届ける先ではなく、頭から出す先として測られている。

測られていたのは、紙に何を、どう書くか、のほうです。

4夜、事実と感情の両方を書いた群だけが、半年後の受診回数が動かなかった。計画を書いた人は、割り込む思考が消えた。紙に書いた群は、脳の動きが高かった。

それでも、146本をまとめた平均は r=.075。

叶える装置ではなく、頭を空ける装置。ノートは、そちらとして測られています。

それだけが、たしかです。

今夜、3分だけ使ってください。いま頭に居座っていることを1つだけ選んで、日付と場所と最初の動作を書く。

書いたら、その紙を閉じる。見返さないところまでが、頭から降ろす手順です。

願いの形にしなくて、いいです。

引き寄せそのものの根拠と、この書き方の効きめは、引き寄せの法則に科学的根拠はあるのかに置いてあります。

思いえがくだけで動けなくなる話は、引き寄せの法則がうまくいかない理由にあります。

出典から書いている理由は、プロフィールにまとめてあります。

出典・参考文献

  1. Pennebaker JW, Beall SK. Confronting a traumatic event: toward an understanding of inhibition and disease. Journal of Abnormal Psychology 1986;95(3):274-281.
  2. Masicampo EJ, Baumeister RF. Consider it done! Plan making can eliminate the cognitive effects of unfulfilled goals. Journal of Personality and Social Psychology 2011;101(4):667-683.
  3. Umejima K, Ibaraki T, Yamazaki T, Sakai KL. Paper Notebooks vs. Mobile Devices: Brain Activation Differences During Memory Retrieval. Frontiers in Behavioral Neuroscience 2021;15:634158.
  4. 酒井邦嘉・梅島奎立・茨木拓也・山﨑崇裕. 紙の手帳の脳科学的効用について. 東京大学大学院総合文化研究科 プレスリリース, 2021-03-19.
  5. Frattaroli J. Experimental disclosure and its moderators: a meta-analysis. Psychological Bulletin 2006;132(6):823-865.
  6. Emmons RA, McCullough ME. Counting blessings versus burdens. Journal of Personality and Social Psychology 2003;84(2):377-389.
  7. Ramirez G, Beilock SL. Writing about testing worries boosts exam performance in the classroom. Science 2011;331(6014):211-213.
  8. Camerer CF, et al. Evaluating the replicability of social science experiments in Nature and Science between 2010 and 2015(Social Sciences Replication Project). Nature Human Behaviour 2018;2:637-644.
  9. Myers SJ, Davis SD, Chan JCK. Does expressive writing or an instructional intervention reduce the impacts of test anxiety in a college classroom? Cognitive Research: Principles and Implications 2021;6:44.
  10. Gail Matthews. Goals Research Summary. Dominican University of California.(2007年の学会発表の要約)

ノートを勧めるために集めた資料ではありません。効いたと出た側も、効果量が小さいと出た側も、追試で再現しなかった側も、同じものさしで並べています。数字は一次資料を開いて確かめたものだけを書いています。

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