願ったあとに、自分を責める夜がふえた人。
ノートに書いた未来が、なにも動かないまま何か月もたっている人。
僕も、いい結果のほうが外から来ると思って、待っていた側でした。
先に結論を書きます。やめたほうがいいのは、引き寄せの法則のうち「いい未来を思いえがくだけ」の部分です。願うほど自分を責める、願うほど動けない、と感じているなら、そこは一度やめていい。
ただし、願いそのものは、すてなくていい。
やめる線と、残す線があります。
順番に書きます。
思いえがくだけだと、動けなくなる
2002年に、未来の考え方をふたつに分けた調査があります。
ひとつは、「叶いそうだ」と見積もること。これを期待と呼びます。
もうひとつは、叶った場面をきもちよく思いえがくこと。こちらは空想です。
期待が高い人ほど、努力がふえ、成果も上がっていた。
空想をきもちよく味わった人ほど、努力がへり、成果も下がっていた。
向きが、逆でした。
追いかけた期間は、長いもので2年です。
短い話ではない。
引き寄せの本がおしえるのは、たいてい後者のほうです。
願ったのに動けないのは、意志が弱いからではなく、空想が努力のほうを先に下げるからです。
気分は、あとから下がる
動けないだけなら、まだいい。
もうひとつ、あとから来るものがあります。
2016年に、4つの追跡研究を載せた論文が出ました。
大人と小学生の両方で、長いものは7か月、追いかけています。
いい未来を空想する人ほど、測ったその時点では、抑うつの症状が少なかった。
ところが数か月後には、空想が多かった人ほど、抑うつの症状がふえていました。
向きが、入れ替わります。
大学生では、成績の低さが、空想と抑うつをつなぐ一因になっていた。
ここは、空想させて比べた実験ではありません。同じ人を追いかけて、関係を測った調査です。
思いえがいた直後は、きもちがいい。だから——やめる理由がみつからない。
効いてくるのは、そのあとです。
言葉をくり返す練習のほうは、アファメーションは効果ないのかに分けて書きました。
引き寄せより先に、休んだほうがいいとき
ここで、線をひとつ引いておきます。
厚生労働省は、うつ病のサインを9つ挙げています。
悲しく憂うつな気分が一日中つづく。好きだったことに興味がわかない。眠れない、あるいは寝すぎる。自分に価値がないように思える。
そのうち5つ以上が、はじめの2つのどちらかを含む形で2週間以上つづいていたら、専門家に相談することをすすめています。
厚生労働省の e-ヘルスネットは、気づいたときの手当てとして、疲れたこころと体を十分に休めること、医師の診察のあとに治療を選ぶことを書いています。
あてはまるなら、引き寄せをやめるか続けるかは、そのあとで決めればいい。
休むほうが、先です。
前向きさは、命の長さを予測しなかった
「前向きでいないと、悪いことを引き寄せる」。
ここまで来ると、自分を責める材料になります。
2007年に、アメリカの放射線治療の臨床試験2本に参加した、頭頸部がんの患者をしらべた論文があります。
論文が測ったのは、治療の前に答えてもらった気持ちの良好さでした。がん患者向けの生活の質の尺度の、下位項目です。前向きさそのものと同じではありません。
その値は、生存期間を予測しませんでした。
分析のしかたを変えても、有意な差はなし。
効いた小集団も、ありませんでした。
そこは、動きません。
気持ちのはたらきは、生存を単独で予測する要因ではない。その証拠がまた増えた、と論文は結んでいます。
気持ちのもちようで寿命が決まる、という言い方には、この研究の裏づけはないんですよね。
そして2009年、「ポジティブ思考の押し売りがアメリカをむしばんだ」と論じた本が、アメリカで出ました。邦訳は2010年、『ポジティブ病の国、アメリカ』です。
前向きでいることが義務になると、うまくいかなかったわけが、ぜんぶ自分に来る。
これは「思いえがくだけ」を、もっと強くした形です。
やめる線と、残す線
ここまでを、3つに分けます。
先に休むのは、うつのサインが2週間つづいているときです。
やめるのは、思いえがくだけで終わる時間です。
残すのは、願いそのもの。
消さなくていい。
願いを消すのではなく、思いえがいたあとに、じゃまになる現実と「もし〜なら、〜する」の1行を足す。この形を教わった女性のほうが、自己申告の運動時間は多くなっていました。
置き換えの中身と、効かなかった試験のほうは、引き寄せの法則がうまくいかない理由にまとめました。
やめるのは「思いえがくだけ」。願いのほうは、残していい。
今日の話をまとめると
引き寄せの法則のうち、やめたほうがいいのは「いい未来を思いえがくだけ」の部分です。
思いえがくだけだと、努力と成果が下がる。数か月後には、抑うつの症状がふえていた。
頭頸部がんの患者では、前向きな気持ちは生存期間を予測しませんでした。前向きさを義務にするわけは、ないです。
うつのサインが2週間つづいているなら、休むほうが先です。
願いは、残していい。
今夜、3分だけ使ってください。きのう一日で、願いを思いえがいていた時間と、その願いのために手を動かした時間を、それぞれ書き出す。
思いえがくほうが長かったら、そこを削る。
削った分は、なににも使わなくていいです。
それだけです。
引き寄せのどこまでが作り話かは、引き寄せの法則は嘘なのかで分けています。
自分を責めるところまで来た人のために書いている理由は、プロフィールに置いてあります。





